もう一つの感情A

佐々木はその勢いのまま私の背中近くにまでくると腰を降ろし背中越しに抱きついてきた。そしてあ然としたままの私の耳もとに「あの時とは逆くだな。あの時は俺も本当にたまげたよ。なにが起こったのか、ただただ呆然としたままだったぜ」と囁きかけてきた。

あの時・・そうあの時のことだ。あの日から私はずっと封印してきたのだ。あの出来事は思春期特有の何かの間違いだったのだ!そう自分に言い聞かせ、青春時代だから許される若気の至りとして記憶から消し去ったものだ。

「俺はあの時のことはずっと覚えているぜ。そうさ色々と記憶は飛んでしまってるけど、俺のこの体はしっかりと覚えているんだ。今でもお前の指先でこねくり回されている乳首から送られてくるあの快感を越える快感とは巡り会えていないんだ。」佐々木は私の背中を抱きしめながらいった。そして私の背中越しから回されている手がまさぐるようにして浴衣をすり抜け、その人差し指と親指とが乳首を転がしてきた。

「ほら思い出したか?お前が俺にやったことだぞ。最初は悪ふざけだと思って笑ってそのままヤラせやっていたんだよな。でもなんかいつもと調子が違っていて、そのうち自分でもなんだか訳のわからないまま、どんどん気持ちが高ぶるってきて、お前の指先で摘まれたり、くるくる回されてたりしている乳首からはどんどん快感が募ってきて。すっかりメロメロにされちまったんだ。そのうち感触がかわってきて、チュバチュバ音が聞こえてきて、乳首に妙な感触があって、お前の舌で転がされてるのがよくわかっよ。吸われると乳首が伸びて硬くなって、どんどん気持ち良くなっていくんだ。今思い出しただけでも感じでくるのさ」

確かにそうだった。あの日は高校の卒業式の前日だった。これで陸上部ともお別れだなと思って最後の記念にと部室に顔を出した時の事だった。その日は現役部員たちは他校との合同練習
ということで出払っていた。だから一人ゆっくりと思い出に浸れるだろうなと思いひっそりとした部室のドアを開けた。

「あっ、たまげた」ドアを開けたと同時に声がした。そこにいたのが佐々木だった。おそらく一人で走り込みでもしていたのだろう、黒のサポーターパンツを履いただけの裸体状態になってタオルで体を拭いていた。現役時代の部活終わりのいつもの光景である。ただいつもと違っているのは
部室にいるのは私と佐々木の二人だけであるということであった。

「おい、どうしたんだ」と佐々木が言った。「この部室とも最後のお別れだと思ってのぞきに来たんだよ。」と答えた私の視線の先には裸体の佐々木が笑っていた。少し薄暗い部室の
蛍光灯の真下に立っている
佐々木の体は、真上から注がれてくる白色の蛍光で陰影が艶めかしく浮き立っていた。「半年ぶりだから体がついてこれないな」と言う佐々木の体には確かに現役の時と比べると脂乗りが良くなっていた。だがそれは体脂肪が一桁だったアスリート体型に程よい脂肪がついたといったレベルの感じであり、人間の本能的な感覚からすると、ある種の性別を超えた美を感じさせる造形に見える。

目の前の佐々木が慌ただしく自分の体を拭いている。
その体が動く度に蛍光灯に照らさた筋肉、骨格そして様々な筋が微妙な陰影を作りながら誘い込むように浮き沈みしている。こんな間近で、こんなにマジマジと男の裸を見るのははじめてのような気がする。「いやそんなことはない。これまでもずっとこんな感じだったではかいか、そんな事はあり得ない」と心の中で呟いている私の面前で「よっしゃー」と掛け声を出しながら、佐々木は両手腕を高々と上げ大きく伸びをした。ほとんど触れるぐらいの面前に、佐々木の縦長に伸びた薄茶色の乳首が、その先が僅かに尖り出ていた。これまでまったく意識などしたことのなかった腋の下の窪みに官能的な性感美を感じてしまう。伸びて広がった肋骨にも官能の意識が持っていかれてしまう。私の意識は蛍光灯の下で艶めかしくくねり回る肢体から醸しだされる肉体の陰影にすべて持っていかれてしまった。


26/04/12 17:40更新 / KAGE

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