読切小説
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運転手に恋して
僕はタクシーに乗るときは、好みの運転手を探します。
正月に乗ったタクシーの運転手は僕の理想の人でした。行き先を言って
「運転手さんはええ男やな―僕は運転手さんのような人が好きなんです」
「そんな世界があるのは知っていたが俺が口説かれるなんて夢にも思はなかった気持ちの悪い俺は女が好きや」
初対面だったので、話題を変えて野球の話なんかしました。降りるとき
「また乗せてください」と言ったら、運転手は「ありがとうございました」
といっただけでした。ここから僕の挑戦が始まりました。
二度目の時は僕の顔を見るなり「ほかの車に乗ってくれ」と乗せてはくれませんでした。三度目は、最初に乗った場所で、5時間待ちましたが逢う事は、
出来ませんでした。4度目の時は「この前ここで5時間待ちました」と言ったら、かわいそうだと思ったのでしようか乗せてくれました。
それ以来、乗車拒否はしなくなりました。それから11月頃まで、
何度か乗りました。運転手さんの気持ちもかなり打ち解けてきたのですが、
OKはしてくれません。11月の終わりごろ、
「もうこれ以上乗りませんから一緒に食事をしてください」
「飯を食うぐらいならいい」そう言ってくれたので
一緒にご飯を食べました。その時
「どうしても駄目なんですね」と聞いたら、意外な事をいいました。
「俺はどんな死に方をしてもいいがエイズで死ぬのはいやだ」
つまり、男同士で遊ぶとエイズになると思っていたようです。
「僕が検査をしてなんでもなかったら遊んでくれますか」
「その時は考えてもいい」そう言ってくれましたので、すぐ保険所に、
行きました。検査結果を、見せるとじっと見ていました。
そのあと、遊んでくれました。ノンケですから僕が一方的に尺八しました。
初めて男と遊んだ時のときめきがありました。別れるとき、
「俺はやっぱり女のほうがいい」
「ありがとうございました」と言って別れました。
25年前の事が昨日のように、忘れることのできない人でした。完
15/06/19 08:47更新 / 桃太郎

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