狼のいる場所 1
その日は会う予定だった男からドタキャンされ、朝からムラムラしていた。昼休みに出会い系アプリで探すと32歳のガタイの大きな男と連絡が取れた。自分は体の大きい年上に抱かれるのが何よりも好きなのだ。 最寄りの駅で待ち合わせる。仕事帰りの作業着がより一層男臭さが増している。身長は180以上有りそうだ。プロフィールより大きく見える。坊主で固太りな体が、強面の顔をより際立たせている。やや冷たい感じの一重ではあるが、かえってその目が狼のような精悍な美しさを男に与えていた。だが時たま見せる微笑みは、善良な男のそれである。表情ごとに魅力が変化し、男の顔から目が離せなくなった。「今日は、暑いな」と言い上着を脱いで自分のリュックに入れた。私はベンチに座っていたので下から見上げる体勢になった。半袖のシャツの袖口から黒ぐろとした脇毛が垣間見える。私は男の秘密の部分を探し当てたような高揚感を憶えた。そこに直接顔を埋めて成熟した雄の匂いを味わいたいという衝動に駆られた。シャツ越しに分厚い胸板も伺える。下半身の作業ズボンは、その大きな尻と腿を押し込むにはややサイズが小さく、男の股間の陰影がハッキリと浮き上がって見える。自分には無い雄の象徴のようなその容姿に、羨望と嫉妬が入り交じる不思議な感情が溢れ出てきたのである。しかしそれはまさに私が彼自身になりたいという強い憧れに他ならなかった。既に私の股間は限界まで怒張し先走りの兆候まで感じていた。動悸が速くなり喉が渇いてくる。まさに私の好きなタイプで、その雄の魅力にはとても抗えそうもなかった。自分とは真逆な感じの男にいつも惹かれてしまう。私は色白で体毛はほとんど無い。今日は、当たりだなと思った。バイクで来ているのでラブホに行こうと言われ後ろに乗った。男同士でも問題なく入れた。ドアを閉めるなり強く抱きしめられる。1日働いた男の汗と体臭で頭がクラクラする。成熟した男のフェロモンだろうか堪らなく良い匂いだ。「いい男だな、モテるだろ」と言いながら口内を舌を絡めて何度も強く吸われグッタリと力が抜けてしまった。 キスが抜群に上手い。そのキスだけで蕩けそうになり、今にもこの男に完全に堕ちてしまいそうになる。ふと目を開けると男が私の顔をじっと見つめている事に気が付いた。「キレイな顔してるな」私も男の狼のような切れ長の目に見とれてしまった。瞳の色が薄い茶色でとても美しかったのだ。お互いに見つめ合っていると不思議な感動を覚えた。愛しさのあまり私から何度もキスを求めた。さっき初めて会った男にこんな感情を持つなんて初めての経験だった。 「一緒に風呂に入ろう。背中流してやるよ」バスタブに湯を張る間に男がサッと服を脱いで全裸になる。肉体労働で鍛えられた体。全身の筋肉がムッチリとした脂肪で覆われている。真夏の入道雲のように盛り上がった広い肩幅。厚い胸板から脂肪の乗ったガッシリと大きな腰回り。先程の予想どおりハリのある大きな尻と太もも。いわゆるプロレスラー体型である。胸元からヘソに続く体毛が美しい。何より雄の象徴であるその一物は既に硬く怒張しゴツゴツと血管が浮いて天を突いている。そのデカさに思わずゴクッとつばを飲み込み、目が離せなくなってしまった。「最近男と別れたから、新しい彼氏を探してたんだ」と真剣な顔で言われた。二人で体を洗いあってバスタブに入り向かい合いゆっくりとキスしながら互いの物をしごきあう。もうそれだけで天国に上るような恍惚感で満たされた。意外にも厳つい見た目とは違い優しさに満ちたキスで、見た目とのギャップに一層好感を持ってしまった。ただやるだけの相手だと思っていたのに。あぁ、これはまずいなと感じていた。 |
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