読切小説
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ゴルフ場で
64歳のバイ親父。仕事も経験を活かしてコンサルタント的な役割に変わり、平日でもたまに休める日があった。そこで、一人でゆっくりラウンドしようかと一人予約が出来るゴルフ場へ行きフロントへ向かった。男性のフロント係が、丁度もう一人同じような人がいて、多少は安くなるし良かったら二人で回られませんか、と言ってきた。まあ、一人で回るのもいいけど、正直寂しいっちゃ寂しいし、チラッとフロントの向こうにいる相方予定の人を見ると、70代半ば、髪は白髪交じりではあるが薄くはなく、何よりも俺のタイプバッチリな人でこっちからお願いしたいくらいである。ま、お仲間さんではないだろうが。。。
話はまとまり、結局二人で回ることとなった。高木さんという人でゴルフ歴は長く、スコアも大体80台、たまに90台という感じだそうだ。まあ、こちらは90台で収まれば良い方で少々波が激しい。「下手ですがよろしくお願いします!」と挨拶し、高木さんも、「のんびり楽しみましょう!」と言ってくれて、良い感じでスタートした。

2サムなので進行は順調で、後ろから追われることはなく、どちらかと言うと前が閊えて待たされることが多かった。前も閊えているしゆっくり行きましょう、ということで、カートでいろいろと話をしながらのんびりとプレイすることにした。話は多岐に渡り、高木さんは74歳、子供が2人、どちらも男で東京と大阪で所帯を持ち、それぞれ二人の子供がいるらしい。趣味も多く、ゴルフの他には、料理、盆栽、株(トレイダー)、温泉旅行、麻雀、カラオケなどなど。前半のハーフで話は盛り上がり意気投合した。スルーだったので引き続き後半のハーフに続くが、状況は変わらず、少々ゆっくりめの流れであった。話のネタが尽き始めた頃、高木さんが、
高木:『今はカミさんと二人暮らしだけど、10年くらい前からあっちの方もなくなったし、趣味でもやってないと一日が暇で。。。渡辺さんはどんな感じですか?』
おおお、とうとう向こうから下ネタをぶち込んできたぞー!ああ、俺は渡辺誠。まあ、男は下ネタは好きだからね。
俺:『ああ、同じような感じですね。私の方が若いかもしれないけど5,6年前からレスですよ。プレイ中に中折れするようになって、そうなると白けますしね。お互い、何となくエッチから遠ざかりましたね。へへ。』 受け流すことはなく、ちょっとこの話題を広げたいと思い、ジャブを入れて返してみた。案の定、引っぱれた。
高木:『そうですよねー、どこも同じだな。でも、あれでしょ、定期的に出した方が良いと言われていますよね。どうしてます?』
いいねー、だんだん、とってもナイスな話題になってきたねー。取り敢えず、下ネタで広げたいからね。でも、高木さんも攻めてくるなー、、
俺:『そうなんですよ、定期的にね。だから若い頃を思い出しながら、ちょいちょい自分でシコシコしてますよ。』と、右手を軽く握って上下にシコシコシコとセンズリの動作をしてみせた。
高木:『そうなりますよねー。渡辺さんご存じないでしょうけど、私は昔買ったサムソンっていう雑誌を見ながら自分で出してますよ。自分でやると途中で中折れもせず最後までいけるので不思議ですよねー、はっはっは。』
え? サムソン? え? 何? 高木さん、、、って、こっち系? え? 前が閊えているとはいえ、ちょいちょいプレイのタイミングはあり、話し中でも会話はいきなり途切れる。だが、もう、ゴルフどころの騒ぎじゃない。タイプのオジサン、高木さんがもしかしたらお仲間かもしれない、と思うと頭はその事で一杯になった。カートに戻ると、
高木:『あー、こんな天気のいい日は、温泉とかに浸かってゆっくりしたいですよねー。』
あー、もうっ! 一旦、話が途切れると話題も次から次へと変わっていく。あー、もどかしい。でも無視する訳にもいかないので、取り敢えず合わせつつ、軌道修正を図ってみた。
俺:『そうですよねー。温泉旅行にもそうしょっちゅうは行けないので、近くのスーパー銭湯に行っては温泉気分を味わってますよ。いろいろ見れますしね。はは。』
高木:『いろいろ見れる?』
俺:『あ、いえいえ。』 はいはいその調子、餌に食い付いてね。
高木:『あ、そうそう。こないだ私も近くのスーパー銭湯に行ったんですよ。そん時、露天にも6,7人くらいは入れるサウナ室があって入っていくと、男が二人いて一人はもう一人の股間に顔を埋めていたんです。ビックリしましたねー。そしたら、股間を大きくしたまま二人は慌てて出て行きましたよ。』
俺:『えー。外はノンケの人がほとんどでしょうに、大丈夫だったんでしょうかね。』 ノンケの人は殆ど使わない "ノンケ” という言葉も使ってみた。
お互い探り合っていて、もう何となくお仲間だと感じているのだろうが決定打がない。どうしたものか。。。と、
高木:『どうだったでしょうね、ま、上手くやったんでしょう。スパ銭もいいのですが、最近のサウナ事情はどうなんですか?』、
恰も私がサウナに行っているかのように決め打ちで聞いてきたけど、そこは気にせず、一歩踏み込もうと思い、
俺:『ああ、上野大番も駒ケンもコロナ前とはいかないまでも大分お客は多くなってきましたよ。』 さり気なく、ゲイサウナを例にあげたが、サウナに対する質問もない。
高木:『特に5類になってからは、患者数は減ってないのに皆の意識は薄れてきましたからね。』
追い打ちで、
俺:『でも、サウナに行けなくて溜まってきた時なんかは、私もサブやG-メンなど見ながらシコシコしてしまいますね。』
高木:『そうですよね、ビデオも良いけど、紙物の雑誌も風情があって結構いけますよね。』
よっし、これで我々二人は同じテーブルに付いたということをお互いに認識したはずだ。さて、ここから、、どうしよう。。。ゴルフも気が付けば、残り3ホールだし。。。

でも、高木さん、のっけから俺がこっち系と知っているかのような物言いだったよなー。ストレートに聞いてみようかな。
俺:『高木さん、もしかして、俺がこっち系だって知ってましたか?』
高木:『半年くらい前に上野のサウナに行ったんですよ。そしたら感じの良い超タイプの方がおられて、アプローチしようかな、っと思ったら、その方帰られてしまったんですよ。自分のアクションの遅さを悔やみましたね。』
俺:『え? もしかして・・・?』
高木:『そう、それが渡辺さん、あなただったのです。ここに来て、もービックリしましたね。また会えるとは思ってもいませんでしたから。半年前でしたけどしっかりとお顔は覚えてましたよ。フロントの人に”あの方は良く来られるのですか?” と尋ねてみたら、”そうでもないですね。今日もお一人で回られる様ですよ。” と。私も一人で回る予定だったから、ここはチャンスだ、と思い、フロントから一緒に回る様に誘ってみてくれないか、とお願いしたのです。そしたら渡辺さん、快く受けてくださって、もう、嬉しかったですねー。』
俺:『そうだったんですか。いえね、私の方もお誘いを受けて、あー良い感じの人だなーっと思って、内心は喜んでいたんですよ。でも、その時は、まさかお仲間さんだとは思いもしませんでしたけどね。でも、ズルいなー。高木さんは初めっから我々の事を分かっていて、でも、遠回しに会話して。。。私の心の揺れ動きを楽しんでいたんでしょう。』
高木:『あっはっは。失敬、失敬。私もどう話そうかなーと考えあぐねていたんですよ。取り敢えず、当たり障りなく話していたら、渡辺さんの内心を表したような表情がとても可愛くて。。すみません、楽しんでしまいました。あっ、最終ホールですよ。最後くらいゴルフに集中しましょう。』
知らんがなー、もー、人の心を弄んでー。。。終わってみると高木さんのスコアは95、俺は100超えの106、お互いにゴルフには集中出来ていなかった様である。最後は昼食付のスルーだが、今日は暑くて汗もかいたので食事前に風呂に入るよな。一般のお客もいるので派手なことは出来ないが、どんな風になるんだろう??? 夢を膨らませながらホールアウトし、クラブハウスに向かった。 (終)
23/07/30 07:48更新 /

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