読切小説
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揺れる心 3
彼とも何となく行き来しずらく成り連絡を取らないまま、欲求はセンズリで慰めていた。
そもそも彼とは10年くらい前、ゲイバーで会ったのが切っ掛けである。特に付き合っている人等いなかった俺は時折サウナに通って息抜きをしていた。そんな時、サウナでよく会うオジサンと仲良くなり、その内、面白いマスターがいるとのことで、とあるゲイバーに誘われた。確かにそのマスターは黙っていればちょい太目のカッコいいバーテンダーであるが、ひとたび言葉を発すると「あらー、いらっしゃいー、あらっ、今日は恰好がいつもと違うじゃない。何か良い事でもあったの?」、、、である。俺はもともとお姉言葉はあまり好きではないが、不思議とそのマスターの喋りは楽しく聞けた。

オジサンと二人で飲んでいた時、閉店間際にスーツ姿の恰幅の良い60歳くらいの親父が飛び込んできた。食事の後飲んで来たとの事で少し酔っている様だった。
マスター 『マーちゃんったら酔ってる時は必ず閉店間際に来るんだからー。今日はまだ飲むの? 会社の重役か何か知らないけど、ちょっとは身体大事にしなさい!  ねえー。』 と最後は俺に言ってきた。
重役という言葉に引っ掛かった訳ではないが、思わず頭の先からつま先まで凝視してしまった。すると、その親父さんもじろっと俺を見た。「酒!」と言ったまま、カウンターにうつ伏せてしまった。マスターは、「あーあ、寝ちゃったわ。もー、しょうがないんだからっ!」
俺の相方はというと、トイレに入ったきり随分と出てこない。
俺 『マスター、俺の相方、トイレ行ったんですよね?』
マスター 『あらっ、そうねー、長いわね。ちょっと見てくるわね。』 の言葉と同時に相方が携帯を片手にトイレから出てきた。
相方 『松田さん、わりぃ。ちょっと、家でトラブってて。先引けるけど、松田さんは折角だからもちょっとゆっくりしてってよ。マスター、お勘定は来月必ず払うから、宜しくー!』 と言って足早にバーを出て行った。取り残された俺は、さっき入って来た親父さんの前で困り果てているマスターと目が合った。
マスター 『あたし、今夜はね、マーちゃんの、あ、この人佐藤正則っていうんでマーちゃんって呼んでるの。でも、この後用事があってマーちゃんのお世話出来ないのよねー。』 と言いながら、すがる様な目で俺を見つめた。状況を察した俺は、
俺 『あ、俺、いいですよ、どうせ暇だし。この人、家まで送って、その後帰りますよ。』
マスター 『え? いいの? いやー、嬉しいわー!! はい、これ、車代! 今度、この人にご馳走させるわね。』
いいの?って、放っておける状況でもなさそうだし。。

やっとのことで親父さんを車に乗せて出発した後、
俺 『オヤジさん! ああ、佐藤さん! 家はどこですか? 住所、、住所言ってください!』
佐藤 『ここだ!』 と、ポケットからホテルか何かのカードを出して、俺に渡した。 えっ?フォーシーズンズホテルって、あの、超高級な・・・今日の日付と部屋番号が書いてあった。え?なんで? なんで、東京なのに東京のホテルに泊まるんだ?重役ってややこいね。取敢えず、カードを運転手さんに渡して、すっかり寝入っている親父さんの顔をまじまじと見た。結構掘りが深くて、なかなかいい感じである。年上好みの俺には段々タイプに思えてきた。ちょっと悪戯心が沸いてきて、親父さんの態勢を立て直すフリをして、親父さんの股間を触ってみた。ぐにゅっと大きそうな金玉が動いた。オオッと親父さんが両足をすぼめたので、やばいっと思い、手を引いた。程なく、ホテルに着き、親父さんを抱えたままロビーに入った。”お帰りなさいませ。”とスタッフが迎えてくれたが、俺は苦笑いしながら軽く会釈をし、エレベーターに向かった。状況を悟ったスタッフは、”お手伝いしましょうか?”と言ってくれたが、取敢えず遠慮した。
親父さんは、これ見よがしにカードをスタッフに見せて、”宜しくな!”と言って、そのまま俺に身を預けていた。

部屋に入って、まずは上着を取って、ベッドに寝かそうと思ったら、
佐藤 『おい、風呂に入るぞ。』 と、自分でズボンを脱ぎ、裸になって浴室に向かった。少しよろけたので咄嗟に体を支えてやると、『お前も一緒に入るぞ。』 と、俺の上着を脱がそうと手を掛けてきたので、
俺 『あ、はいはい、分かりました。入ります、入ります。』 酔っ払い相手に逆らっても埒が明かないし、どちらかと言うと好みの親父さんだし、ま、いっか、と俺も服を脱ぎ、後に続いた。浴室に入ってシャワーを浴び始めるも親父さんの動きは覚束ないので抱かかえる恰好になると、くるっとこっちに向き直して、俺の両手が塞がっていることを良い事に俺のチンポを触ってきた。あっ、と腰を引いた俺を尻目に、
佐藤 『おっ、兄ちゃん、良いチンポしとるの。』 と言って、いきなり俺のチンポにしゃぶりついてきた。
俺 『えっ? あっ! ちょっと、ちょっと。。。何するんですか!』
あ、そうか、ゲイバーに来ているという事は、親父さんもこっち系のお仲間さんなのか、と気が付いた俺は、それでは、、ということでおしゃぶりし易い様に腰を突き出して暫し快感を楽しもうと思った。。。のだが、、やっぱり酔っ払い、、またそのまま眠りに落ちてしまった。
俺 『ほらっ、佐藤さん、起きて! ベッドで寝てください!』 、、、反応なし。
仕方がないので取敢えずバスタオルで親父さんの身体を拭き、途中で股間をチェックしたところズル剥けで結構でっかいチンポだった。亀頭のくびれを拭いている時に親父さんは、ああーん、みたいな吐息を漏らした。可愛い、と思った。
やっとの事でシャツとパンツを着せて、ベッドに横に寝かせた。落ち着いて部屋を見廻すと、なかなか広くて、結構高そうな感じだった。風呂も広いし、ベッドも大きい。一息ついて帰ろうと思ったが、ビールくらいいいだろうと冷蔵庫から1本出して、一気に飲み干した。

数日後、バーに一緒に行った相方から連絡があり、バーのマスターが店に来て欲しいと。。詳しい事は分からないが、何でも、佐藤さんが俺に用事があるとの事らしい。指定された日の夜、店に行くと、既に佐藤さんは来ていてウイスキーグラスを傾けていた。店に入ると直ぐに、
佐藤 『松田さんですね、いやー、先日は本当に失礼しました。実は酔ってて細かいことは覚えとらんのですが、マスターやホテルスタッフからいろいろと伺って。。。。ほんっと、申し訳ない!』 と、重役さん、深々と頭を下げた。
俺 『いえいえいえいえ。俺、あ、私は、別に、何も。。。』
佐藤 『あのー、お詫びと言っちゃあ何ですが、一杯、ご馳走させていただけませんか? 是非!』
俺 『いやいやいやいや。ほんと、大丈夫ですから。でも、折角ですからお話しだけでも。。』 ちょっと、このまま別れるのは何か寂しい気がしたのである、、タイプだったし、素面の時の親父さんは体型はどっしりとしていたが、結構、恰好良いのである。好きになっちゃったかも。。。。
佐藤 『マスター、ほら、こないだ俺が買ってきた奴、出して、出して。 ああ、ま、別に大したものではないのですが、先日フランスに行った時に良いのがあったので買っといたんですよ。』
すっごく美味しいブランデーだった。お酒を交わしながらあれこれと世間話などして和やかな雰囲気になった。先日、俺のチンポをしゃぶった事を言おうかどうか迷ったが止めておいた。で、帰り際に、あまり先の事は約束することはなかったのだが連絡先だけ交換して、俺は店を出た。そんなことが切っ掛けだったが親父さんも俺を気に入ってくれたらしく、その後もちょくちょく会うようになり、やがて体の関係も深まっていくようになったのである。

ただ、最近の湯川さんとの出来事などはなかなか話せる雰囲気ではなかったので機を逸していたそんな折、珍しく湯川さんから連絡があり、俺に会いたい人がいるとのこと。これまた状況はよく分からないのだが、湯川さんの事だから危ない事はないだろうと思い、日を決めて行くことにした。
22/05/23 16:10更新 /

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