■ 窓 - 窓 4
秋の実業団の大会が近いようで、彼は毎日仕事の後練習に行っているようだ。日曜日にどこで練習をやってるのか見たくてビデオを持って後を追うと、すぐ近くにある市のスポーツセンターに入っていった。すでに練習試合の真っ最中である。彼も準備をしにロッカールームに入って行く。防具を付けて出てくると、殺気のようなすごい気合が感じられ近寄りがたい感じであった。ひと際大柄な体躯に剣道の防具が良く似合い、あまりのカッコよさに見とれてしまう。奇声を出しながらの俊敏な動きに圧倒され、また試合中の凛とした佇まいの美しさに魅了されたりと気付くと一時間ほど撮影していた。そばにいる人に強いですねと聞くと、6段で優勝候補だと教えてくれた。子供たちにも教えていたし師範レベルなのだろうか。その時急に「ビデオで試合を撮影してたんですか?」と彼が面を外しながら近寄ってきて、低く良く通る声で話しかけてきた。「自分の試合を見て動きを分析してみたいと思ってたんです」「突然声かけてすいません。井上洋輔と申します」礼儀正しく挨拶してくれた。「こちらこそ、勝手に撮影してすいません。原田圭太です」と自己紹介した。人懐っこい屈託のない笑顔だ。彼は太陽の下を歩いてきた人なんだなと思った。そうでなければ、こんな笑顔で初対面の人間に挨拶なんてできない。日向のような匂いと体温が直ぐ近くに感じて切ない気持ちになる。自分とは真逆で人見知りしない人なんだなと思い、いつも欲望の対象でしか彼を見ていない自分がたまらなく恥ずかしくなった。「通常のVHSとテープの規格が違うので撮影用のこのカメラでなら再生できますよ」「そんな高そうなカメラは借りれませんので、少しお時間いただけませんか。これから時間ありますか?」と彼に聞かれ「今日はもう予定はありません」と答える。「じゃあ良かったら私の部屋で見せてもらってもいいですか?ここから直ぐなので」結構押しが強い。こんな急展開になるとは全く予想外で夢なら覚めるなと本気で思った。合鍵を使わなくて本当に良かったと心からそう思った。歌の歌詞みたいだけど、なんでも思い続ければ、一つくらい願いは叶うのかなと思った。「シャワーを浴びてすぐに着替えて来ます」「分かりました。ここで待ってます」友達になれればそれでいい、それ以上を望んではいけないのだ。
帰り際、彼の精悍な横顔に見とれながらいろいろ質問してしまった。剣道は、中学から始めたそうですぐに夢中になりどんどん上達していったそうだ。始めたころは細かったが高校から筋トレも取り入れてやったら体が大きくなってきたそうだ。今は知人に頼まれて、週に1回ほど市の剣道クラブで子供たちに教えているそうだ。年令は37才、身長185p、体重は試合前で94s、本当は90kgくらいまで絞らないと体が重いそうだ。剣道は室内競技のせいか、近くで見ると彼の肌はとても綺麗だった。普段から運動をしている事もあり年齢よりかなり若く見えたのだ。いつも自分の部屋から見るより、並んで歩くと彼の体の大きさとボリューム感の凄さに圧倒された。私は25歳で162p、56s、年は一回り離れている。私は元来運動が苦手だったので、「自分も井上さんみたいな体になりたいです。身長もあと10センチ欲しかったな」と言ったら。「近くにいると無駄にデカくて邪魔ですよ。女性や子供からは怖がられるし」「私は逆に原田さんと入れ替わりたいですよ。野村宏伸に似てるって言われませんか?可愛いし、絶対モテるでしょう」確かにその俳優さんには、似てると言われていた。
「お互い無いものネダリですね」アハハハッ!笑顔で私に笑いかけてくる。また胸がドキドキしたが、それはいつもと少し違う高揚感が有り久しぶりに大声で笑い合えた。屈託のない気取らない性格が、こちらにも伝染するような不思議な魅力がある。彼の前では、あまり人見知りすることも無く気軽に話せた。大好きな彼とこんなに話が出来るなんて全く夢の様であった。
彼が「今日はお時間を取ってもらうお礼です。私が夕食を作りますので」
「いや〜、それはかえって申し訳ないです。後で帰って食べますから」と私が言うも「大したものは出来ませんが、ビールのつまみを作るので一緒に飲みながらビデオ見ませんか?」とまたぐいぐい押してくる。なんで初対面なのにこんなに良くしてくれるのか不思議であった。それに一緒にお酒って、友達扱いしてくれるのが嬉しい。「料理を作るのが好きなんです。今日みたいに誰か食べてくれる人がいると嬉しいし」と言われたら断れない。「じゃぁ、よろしくお願いします」と答えた。私が道路にはみ出て歩いていると、「危ないよ」と肩を抱いて歩道側に抱き寄せてくれ心配そうに私の顔を覗き込む様に見てくる。思いのほか彼の顔が近くて目が合ってしまい頬が熱くなった。これって恋人同士みたいだ。だがあまり変に期待しすぎると後が辛くなるので、偶然かなと考えあまり気にしないようにした。それからスーパーで買い出しをしてアパートに帰ってきた。私はドア横の洗濯機をチラッとみて、また自己嫌悪になる。彼がカギを開けて中に入りどうぞ上がってくださいと声をかけてくれた。
「お邪魔しまーす」と声をかけ玄関から中へ入ると、キッチンにダイニングテーブルが置いてある。その奥がベットと机が置いてある窓から見えてた部屋だ。男の一人暮らしにしてはキッチンも含めて部屋がキレイだ。今日は急に来たのに良く片付けられていて生活感が余りない。几帳面できれい好きなのかもしれない。部屋の匂いというのは住人の匂いで出来ている。入ったときから彼の匂いで充満しており、洗剤の香りと彼の匂いがブレンドされた清潔感のあるたまらなく良い匂いである。スポーツをしてる人は毎日入浴し洗濯もするというのは聞いたことが有る。すでに私は部屋の匂いだけで股間が熱く充血してきたのを感じた。別の事を必死に考え気を逸らす。「キレイにされてますね」と言うと「昨日掃除したばかりだからですよ」「適当に座ってください。今準備しますから」「暑いので、窓を開けて扇風機をつけて下さい」と言われたので窓を開けて自分の部屋を確認すると、こちらからはかなり上を見上げる感じなのでマンションの窓の中は全く見えない。まったく絶妙な位置関係だ。これならまさか覗かれてるなんて思わず、夜でも安心して窓を開けるだろう。ベッドに腰かけテレビを見ていると、毎週土曜日の彼の痴態や果てる際の苦しそうな顔がフラッシュバックしてまた充血が始まる。このベッドで彼が果てる様を何度見ただろうか。
9月下旬なのにここ数日まだ残暑が続き部屋の中もかなり暑い。彼はキッチンで料理をしているのですでに汗をかいたようだ。こちらの部屋に来てすぐ側で裸になり汗を拭いている。彼が「今日は暑いですね」と裸のまま笑顔を向ける。「料理で火を使ってるので暑いですよね。すいません」と答えた。「いえいえ、慣れてますから。大丈夫です」着替えてる彼をTVを見てるふりをしながら横目で観察した。全身筋肉の上に程よく脂肪が付いてる感じだ。筋肉で隆起した広い肩、太く逞しい両腕と分厚い胸からやや脂肪が乗ったがっしりと大きな腰回りそして大きな張りのある尻、胸からへそにかけての体毛が美しい。太く筋肉質な太腿は鍛錬の賜物だろう。何より日頃の稽古の成果である肌理の細かい滑らかな肌が美しかった。私のすぐ横から彼のうっとりするような良い匂いを感じ、たまらない気持ちになった。上はタンクトップ下はショートパンツに着替えていく。ショートパンツを履くときに股間の下着の大きな膨らみがブルンと揺れた。理性で何とか気持ちを抑える。遠くの窓から見ているのと違い、目の前で彼の大きな体を見るのは迫力が段違いであった。せっかく落ち着いてきたのにまたカチカチに勃起してしまった。見られたかなと思い立膝になり目立たないようにした。まったく無防備に着替えるなと思ったが、ここは彼の部屋で自分が意識しすぎなのだ。必死にTVに集中したら少し落ち着いてきた。タンクトップは、Tシャツより肌の露出が多く筋肉も良く見えるので目のやり場に困る。私は彼の暗鬱とした腋下に目が釘付けとなり吸い込まれるような感覚に陥った。