第8話 ヒロ
土曜日の午後。賑わう繁華街の片隅にあるカフェレストランでタカシ(第4話参照)と食事。もちろん太郎も一緒。
「オープンテラスでオヤジふたりと青年ってどういうふうに見られてんのかね」
タカシは食後のホットコーヒーを一口飲んで微笑んだ。
「変かなあ。別におかしくないと思うけど」
太郎が行き交う人々を眺めながらアイスカフェラテのストローを咥える。
「っで、キミたちはどうなの? なんか進展あったの?」
「どうなの太郎?」
太郎にふる俺。
「えっ、んー、どうなんだろ」
あまり表情を変えずに歩行者を眺める太郎。付き合い始めたころは臆面もなく派手に遊んでいたことを話していたけど最近はそういうこともなくなった。ある意味受け入れられたのかなあとも思うけど時折遭遇する見知らぬオヤジとの行為に新たな愉しみを見出したというほうが言い得ているのかも。
「ようっ!」
そこへ突然タカシの背後から肩を叩いて話しかけてきた大男。どうやら知り合いのようだ。
「ああ、どうもお久しぶりです」
ベージュのチノパンにブルーのボタンダウンシャツを着た60歳半くらいに見える短髪の熟年男。腹も腰も尻もデカくておまけに背も高い。鼻下とあごに白いひげが短くきれいに整えられていてアダルトな雰囲気。だけど笑うと無邪気な童顔。
「えっと……」
男はそのままの笑顔で俺と太郎を見る。
「二人ともお仲間」
タカシがそう言うと軽く会釈する男。
どうやら仕事仲間でもあるらしくタカシと何やら一言二言同業の専門的な話をしている。
これって俺たちにありがちな状況。お仲間を街で見かけても知らない人といたら基本声を掛けることはない。そして話しかけたとしても相手の名前を口にしないのがマナー。ゲイ活動では本名を名乗っていない人も多い。
「彼、カメラマン。以前ウチの広告でスチール(写真)やってもらったりしてたんだ」
「倉田です。こんちは」
「どうも」
「こんにちは!」
ずっと歩行者を眺めていた太郎が倉田さんに釘付け。(笑)まあ確かにかっこいい歳の取り方をしている人だけど。
「すぐそこのスタジオで撮ってたんだよ」
「まだシャッター押してるの?」
「ときどきね。ほとんど若いのに任せてるけど」
腕まくりしたシャツから太い腕。手の甲は分厚くて指もゴツゴツと太い。あんなので繊細なカメラのシャッターが押せるのだろうか。そもそもファッションモデルのカメラマンのイメージとまったく違ってて体格見てるとなんだか笑いそうになる。
「こう見えても彼すごいんだよ。海外では有名なんだから」
「はは、昔の話だよ。最近タカシからお声がかからなくなったからなあ」
「そんなそんな。大先生にウチの仕事なんてお願いできないっすよ」
「またまた」
倉田さんはフリーランスでアシスタントを数人抱えて活動しているらしい。背筋が伸びて動きも機敏。話し方もすごく精力的だ。倉田さんと話しているとグングンと引き込まれていく感じがする。
「へえ。付き合ってるってわけじゃあないんだ」
「そうですね。微妙ですけど」笑
「太郎くんすごいかわいいね。ガタイもいいし。モテるでしょ」
「いやあ」
「結構年上がいいんだね。甘えちゃう感じ?」笑
「はは、そうですね」
「太郎くんに甘えられたらオヤジらイチコロだな。はっはは」
街中のオープンテラスで結構大胆な倉田さん。タカシもちょっと苦笑い。
「どんな写真撮ってるんですか?」
そんな倉田さんに太郎も興味津々。
「ファッション雑誌のグラビアやらアパレルの広告写真やらなんでも。……あれっ? そんなふうに見えない? よく言われるけど」笑
「まあその風貌でファッションカメラマンですって言われてもなあ」笑
「タカシ!」
倉田さん大きく身体を揺らして頬を膨らませた。
「太郎くんスマホ貸して」
「えっ?」
「写真撮ってあげる。いい?」
「う、うん」
倉田さんは太郎からスマホを受け取るとぶっとい指で器用に画面を操作してレンズを太郎に向けた。
「もう少しヒロさんに寄って。もっともっと」
俺の座っているところに太郎が身体を寄せる。
「ヒロさんも太郎くんにくっついて。そうそう」
「えええ? も、もっと? はっずう」笑
そうしながらも何度となくシャッター音が鳴ってポーズを取る前に終わった。レンズを向けられてからほんの数秒。
「もう撮ったの?」
タカシもちょっと驚く。
倉田さんは連写機能で撮られた数枚の中から一つを選んで画面に表示した。
「わああっ! すっげえ!」
「へえ、プロみたい!」
「どう? 信じてくれる?」笑
少し曇り空なのに写真のふたりの顔は艶やかに透き通っていて、二人の自然な笑顔が寄り添って幸せそうに輝いている。
「なんでこんな明るく撮れるの? ライトもフラッシュもないのに」
タカシが不思議そうに写真を眺める。
「これ」
倉田さんがテーブルを指さした。
「ん?」
「テーブルの反射光がいまヒロさんに当たってるだろ」
「ああほんとだ」
「だから太郎くんにもそこに顔を寄せてもらって撮ったの。レフ版(撮影で使う反射板)の代わりだな」
よくみるとピントは少し合ってなくて構図もふたり画面の端に寄っている。でもいつもの写真とは全く違う、ふたりの日常を切り取ったポートレート(印象写真)のようだ。
そんな写真を太郎はしばらくの間黙って見つめていた。
太郎はすっかり倉田さんと仲良しになり(笑)4人で飲みに行くことに。せっかくだからと倉田さんの知り合いの店に連れて行ってくれた。店はダウンライトの落ち着いた無国籍料理の高級居酒屋。
「キミたちマジいい加減にしないとホント変態カップルになっちまうぞ」
少し酒の回った感じのタカシ。会うと口癖のようにこれを言う。
「そんなに?」笑
倉田さんはタカシからそのふたりについての詳細を面白そうに聞いていた。見た目よりも酒は強くないようですでに顔が赤らんで火照った目をしている。
そのことについて倉田さんは何も言わなかった。興味本位にエロ話にすることもなくタカシの話を楽しんでいるようだった。なんだかワイルドなんだけどジェントルマンなんだよなあ。
思いのほか話が弾んでいるところ、タカシが思い出したように「帰る!」と言って席を立った。終電間近だ。それをきっかけにみんなで店を出る。
タカシは明日も仕事だと言って最寄りの駅の方へ歩いて行った。ほかの3人は沿線が違うので逆方向でタクシーを拾った。
俺が助手席に座り倉田さんと太郎が後部座席に。
「これからふたりどうするの?」
「太郎、俺ん家来る?」
「うん」
「オレの部屋で飲みなおさない? 明日休みなんでしょ?」
倉田さんの提案にしばし沈黙。
「こんな遅い時間にいいんですか?」
「いいよ。オレひとりだから」
「太郎はどう?」
「うん。行く」
結構即決。笑
そして何かが始まるその前の緊張する時間。3人の思惑が一つになって絡み合う車内。沈黙する空気に車の走行音だけが低く響く。
高級住宅街に建つ綺麗なマンションの前でタクシーが停まった。倉田さんは先に歩き、エントランスからエレベーターに乗る。
「……水あったかなあ」
ポツリとひとりごとの倉田さん。大きく張り出したお腹をさすって点滅する階表示を見上げる。それに対して俺も太郎もちょっと緊張ぎみ。ここまでほとんど会話がない。しかしそれがふたりの意思を示していることは倉田さんは知っている。
部屋は広いダイニングとリビングがオープンに分かれていてその奥に開いた扉があってもうひと部屋見えている。どうやら寝室のようだ。
3人はリビングのソファーでグラスを傾けた。倉田さんはウォッカのソーダ割り、ふたりは焼酎を薄く水で割って飲んだ。
「タカシが言ってたことほんと?(笑)ねえ太郎くん」
言ってたこととはいわゆる『目前浮気』のこと。
「ほぼその通りです」微笑
「でもさふたり付き合ってるんでしょ。ヒロさんは大丈夫なの?」
「僕が言い出しっぺなんです」
「えっそうなの! へえ」
倉田さんのベルト。ソファーに腰掛ける時に緩めてチノパンの前も少し開いている。シャツのボタンも上から3つほど開けて胸元の毛が見えている。そして解放されたお腹が前に迫り出してシャツを膨らませている。
「オレがヒロさんだったら嫉妬しちゃうかもしれないけど、こっちの立場だと、…… ちょっと興奮するね」笑
そんな倉田さんにちょっと興奮する俺。笑
「太郎くん、オレのことどう?」
「かっこいいっす」
「かっこいいかあ。久々だなあそんなこと言われたの」
「太郎マジですよ」
「そう。太郎くんオレとできる?」
「……うん」
「ヒロさんは?」
「え、はい」
太郎の着ているものがゆっくりと俺の目の前ではぎ取られていく。一枚一枚丁寧に脱がされ、そうしながら倉田さんはじっくりと観察するように眺める。
太郎が自分で脱ごうとすると静かにそれを止める倉田さん。太郎にはなにもさせず焦らすように脱がせていく。まとわりつくシャツに身体をくねらせる太郎。大きく胸を膨らませ横にひねるように上体を起こすと硬くなった乳首が上を向いてツンと勃った。
「いやらしい身体だなあ。ムッチリとしてて本当にエロいよ」
倉田さん、その乳首に舌をつけて転がす
「ああっ」
「本当にヒロさんの前で…… 興奮するの?」
「う、うん。あああ」
「チンポ出すよ」
倉田さんは最後のパンツに手のひらを当てて盛り上がった部分をゆっくりと回すように撫でた。
「ああ、はあああっ」
太郎はゴツい身体をくねらせてソファーの上で身悶えた。
パンツは徐々に下され、すでに硬く膨れ上がったチンポがむき出された。亀頭の先から透明の汁を漏らして倉田さんの手を濡らした。
「ああ、すごい。もうこんなになってるよ」
倉田さんは手に付いた我慢汁の糸を引いて見せた。
「あああ」
決して強引ではない、しかし確かな誘導で俺と太郎を導いた。大きく暖かい空気がアブノーマルな世界にあってふたりを安堵させた。
倉田さんと太郎が一緒にシャワーを浴びてその後俺が浴びた。バスルームから出ると二人は照明を落とした暗い寝室のベッドの上だった。
倉田さんの身体は思いのほか筋肉質だった。腹から胸にかけて体毛がしっかりと生えていてその毛は黒々としていた。太郎はその生えた毛に顔を埋めて倉田さんに抱きついていた。
倉田さんはそんな太郎の身体を優しく離すと仰向けに転がした。
「ケツマンコ見せて」
太郎は言われるまま脚を持ち上げて開いた。すると倉田さんはサイドテーブルにあったリモコンで照明を明るくした。
「あああ」
「よく見せて。太郎くんのケツマンコもっと開いて見せて」
「ああ、はああ」
「ほら、ヒロさんがチンポしごきながら見てるよ」
太郎は泣きそうな顔で俺を見た。脚を大きく上げて倉田さんにケツマンコを向けながら俺を見た。
「気持ちいい?」
「はあああ、う、うん」
太郎は顔を真っ赤にして俺にうなずいた。
「ヒロさんもおいで」
倉田さんはそう言いながら俺に手を差し伸べた。俺はベッドに上がると倉田さんのそばに座った。
「ふたりでヤってるところ見せてよ。いつもヤってるようにさ」
太郎を見ると顔を火照らせて脚を開いて待っているように見えた。俺は太郎の股のあいだに身体を寄せて開いたケツマンコを舐めた。
「はあああっ!」
太郎は激しく身悶えて身体をくねらせる。ふたりの時とは違い激しく興奮する。
「ああ凄いなあ」
倉田さんは太郎の乳首に吸い付いて甘く歯を立てた。
ひとりは今付き合っている彼氏。もうひとりは今日初めて出会った熟年男。太郎は二人に身体中舐められながらその禁断の快感を味わった。
おもむろに俺の身体に抱きつく倉田さん。
「ヒロさんはどうなの? ここ」
そう言って俺のケツ穴に手を伸ばした。
「俺は……」
「ヤったことあるんでしょ?」
「い、いや。最近は」
「感じる?」
「ど、どうかな」
俺は太郎に覆いかぶさったままケツ穴をいじられた。そのうちローションを塗られ指が挿入された。
「あああ!」
「すごい! 感じるじゃない」
俺の顔を見つめる太郎。その表情は泣き出しそうで、それでいて興奮しているような、とても複雑な顔だった。俺が「ああっ」と声を漏らすと同調して口を開く太郎。そして俺も情けない顔になってまた声を漏らす。
太郎がこんな俺を見るのは初めてだった。しかも太郎ではなく別の男が俺を責めているのだ。いつもの立場が逆転してしまったことに戸惑う太郎そして俺。
「うううっ!」
倉田さんのチンポが俺の中に。ゆっくりゆっくりと。その表情を太郎が真下で見ている。
「ほら、根元まで入った」
倉田さんの言葉に反応する太郎。
「あああ。チ、チンポ入ったの?」
「あああ、はあああ」
「チンポ入れられたの?」
太郎はなぜか動揺し俺の顔を見つめた。
「気持ちいいの?」
「はああああ」
倉田さんはゆっくりとゴツい腰を前後させてチンポを出し入れし始めた。
「ああっ、ああっ、ああっ、ああっ」
「ヒ、ヒロさん。ヒロさん! 気持ちいいの?」
「ああっ! ああっ! ああっ! あああっ!」
腹の内側をかき回されるような快感に痺れて太郎の言葉に答えられない。
太郎はそんな俺の表情を見ながら涙を流した。
つづく
「オープンテラスでオヤジふたりと青年ってどういうふうに見られてんのかね」
タカシは食後のホットコーヒーを一口飲んで微笑んだ。
「変かなあ。別におかしくないと思うけど」
太郎が行き交う人々を眺めながらアイスカフェラテのストローを咥える。
「っで、キミたちはどうなの? なんか進展あったの?」
「どうなの太郎?」
太郎にふる俺。
「えっ、んー、どうなんだろ」
あまり表情を変えずに歩行者を眺める太郎。付き合い始めたころは臆面もなく派手に遊んでいたことを話していたけど最近はそういうこともなくなった。ある意味受け入れられたのかなあとも思うけど時折遭遇する見知らぬオヤジとの行為に新たな愉しみを見出したというほうが言い得ているのかも。
「ようっ!」
そこへ突然タカシの背後から肩を叩いて話しかけてきた大男。どうやら知り合いのようだ。
「ああ、どうもお久しぶりです」
ベージュのチノパンにブルーのボタンダウンシャツを着た60歳半くらいに見える短髪の熟年男。腹も腰も尻もデカくておまけに背も高い。鼻下とあごに白いひげが短くきれいに整えられていてアダルトな雰囲気。だけど笑うと無邪気な童顔。
「えっと……」
男はそのままの笑顔で俺と太郎を見る。
「二人ともお仲間」
タカシがそう言うと軽く会釈する男。
どうやら仕事仲間でもあるらしくタカシと何やら一言二言同業の専門的な話をしている。
これって俺たちにありがちな状況。お仲間を街で見かけても知らない人といたら基本声を掛けることはない。そして話しかけたとしても相手の名前を口にしないのがマナー。ゲイ活動では本名を名乗っていない人も多い。
「彼、カメラマン。以前ウチの広告でスチール(写真)やってもらったりしてたんだ」
「倉田です。こんちは」
「どうも」
「こんにちは!」
ずっと歩行者を眺めていた太郎が倉田さんに釘付け。(笑)まあ確かにかっこいい歳の取り方をしている人だけど。
「すぐそこのスタジオで撮ってたんだよ」
「まだシャッター押してるの?」
「ときどきね。ほとんど若いのに任せてるけど」
腕まくりしたシャツから太い腕。手の甲は分厚くて指もゴツゴツと太い。あんなので繊細なカメラのシャッターが押せるのだろうか。そもそもファッションモデルのカメラマンのイメージとまったく違ってて体格見てるとなんだか笑いそうになる。
「こう見えても彼すごいんだよ。海外では有名なんだから」
「はは、昔の話だよ。最近タカシからお声がかからなくなったからなあ」
「そんなそんな。大先生にウチの仕事なんてお願いできないっすよ」
「またまた」
倉田さんはフリーランスでアシスタントを数人抱えて活動しているらしい。背筋が伸びて動きも機敏。話し方もすごく精力的だ。倉田さんと話しているとグングンと引き込まれていく感じがする。
「へえ。付き合ってるってわけじゃあないんだ」
「そうですね。微妙ですけど」笑
「太郎くんすごいかわいいね。ガタイもいいし。モテるでしょ」
「いやあ」
「結構年上がいいんだね。甘えちゃう感じ?」笑
「はは、そうですね」
「太郎くんに甘えられたらオヤジらイチコロだな。はっはは」
街中のオープンテラスで結構大胆な倉田さん。タカシもちょっと苦笑い。
「どんな写真撮ってるんですか?」
そんな倉田さんに太郎も興味津々。
「ファッション雑誌のグラビアやらアパレルの広告写真やらなんでも。……あれっ? そんなふうに見えない? よく言われるけど」笑
「まあその風貌でファッションカメラマンですって言われてもなあ」笑
「タカシ!」
倉田さん大きく身体を揺らして頬を膨らませた。
「太郎くんスマホ貸して」
「えっ?」
「写真撮ってあげる。いい?」
「う、うん」
倉田さんは太郎からスマホを受け取るとぶっとい指で器用に画面を操作してレンズを太郎に向けた。
「もう少しヒロさんに寄って。もっともっと」
俺の座っているところに太郎が身体を寄せる。
「ヒロさんも太郎くんにくっついて。そうそう」
「えええ? も、もっと? はっずう」笑
そうしながらも何度となくシャッター音が鳴ってポーズを取る前に終わった。レンズを向けられてからほんの数秒。
「もう撮ったの?」
タカシもちょっと驚く。
倉田さんは連写機能で撮られた数枚の中から一つを選んで画面に表示した。
「わああっ! すっげえ!」
「へえ、プロみたい!」
「どう? 信じてくれる?」笑
少し曇り空なのに写真のふたりの顔は艶やかに透き通っていて、二人の自然な笑顔が寄り添って幸せそうに輝いている。
「なんでこんな明るく撮れるの? ライトもフラッシュもないのに」
タカシが不思議そうに写真を眺める。
「これ」
倉田さんがテーブルを指さした。
「ん?」
「テーブルの反射光がいまヒロさんに当たってるだろ」
「ああほんとだ」
「だから太郎くんにもそこに顔を寄せてもらって撮ったの。レフ版(撮影で使う反射板)の代わりだな」
よくみるとピントは少し合ってなくて構図もふたり画面の端に寄っている。でもいつもの写真とは全く違う、ふたりの日常を切り取ったポートレート(印象写真)のようだ。
そんな写真を太郎はしばらくの間黙って見つめていた。
太郎はすっかり倉田さんと仲良しになり(笑)4人で飲みに行くことに。せっかくだからと倉田さんの知り合いの店に連れて行ってくれた。店はダウンライトの落ち着いた無国籍料理の高級居酒屋。
「キミたちマジいい加減にしないとホント変態カップルになっちまうぞ」
少し酒の回った感じのタカシ。会うと口癖のようにこれを言う。
「そんなに?」笑
倉田さんはタカシからそのふたりについての詳細を面白そうに聞いていた。見た目よりも酒は強くないようですでに顔が赤らんで火照った目をしている。
そのことについて倉田さんは何も言わなかった。興味本位にエロ話にすることもなくタカシの話を楽しんでいるようだった。なんだかワイルドなんだけどジェントルマンなんだよなあ。
思いのほか話が弾んでいるところ、タカシが思い出したように「帰る!」と言って席を立った。終電間近だ。それをきっかけにみんなで店を出る。
タカシは明日も仕事だと言って最寄りの駅の方へ歩いて行った。ほかの3人は沿線が違うので逆方向でタクシーを拾った。
俺が助手席に座り倉田さんと太郎が後部座席に。
「これからふたりどうするの?」
「太郎、俺ん家来る?」
「うん」
「オレの部屋で飲みなおさない? 明日休みなんでしょ?」
倉田さんの提案にしばし沈黙。
「こんな遅い時間にいいんですか?」
「いいよ。オレひとりだから」
「太郎はどう?」
「うん。行く」
結構即決。笑
そして何かが始まるその前の緊張する時間。3人の思惑が一つになって絡み合う車内。沈黙する空気に車の走行音だけが低く響く。
高級住宅街に建つ綺麗なマンションの前でタクシーが停まった。倉田さんは先に歩き、エントランスからエレベーターに乗る。
「……水あったかなあ」
ポツリとひとりごとの倉田さん。大きく張り出したお腹をさすって点滅する階表示を見上げる。それに対して俺も太郎もちょっと緊張ぎみ。ここまでほとんど会話がない。しかしそれがふたりの意思を示していることは倉田さんは知っている。
部屋は広いダイニングとリビングがオープンに分かれていてその奥に開いた扉があってもうひと部屋見えている。どうやら寝室のようだ。
3人はリビングのソファーでグラスを傾けた。倉田さんはウォッカのソーダ割り、ふたりは焼酎を薄く水で割って飲んだ。
「タカシが言ってたことほんと?(笑)ねえ太郎くん」
言ってたこととはいわゆる『目前浮気』のこと。
「ほぼその通りです」微笑
「でもさふたり付き合ってるんでしょ。ヒロさんは大丈夫なの?」
「僕が言い出しっぺなんです」
「えっそうなの! へえ」
倉田さんのベルト。ソファーに腰掛ける時に緩めてチノパンの前も少し開いている。シャツのボタンも上から3つほど開けて胸元の毛が見えている。そして解放されたお腹が前に迫り出してシャツを膨らませている。
「オレがヒロさんだったら嫉妬しちゃうかもしれないけど、こっちの立場だと、…… ちょっと興奮するね」笑
そんな倉田さんにちょっと興奮する俺。笑
「太郎くん、オレのことどう?」
「かっこいいっす」
「かっこいいかあ。久々だなあそんなこと言われたの」
「太郎マジですよ」
「そう。太郎くんオレとできる?」
「……うん」
「ヒロさんは?」
「え、はい」
太郎の着ているものがゆっくりと俺の目の前ではぎ取られていく。一枚一枚丁寧に脱がされ、そうしながら倉田さんはじっくりと観察するように眺める。
太郎が自分で脱ごうとすると静かにそれを止める倉田さん。太郎にはなにもさせず焦らすように脱がせていく。まとわりつくシャツに身体をくねらせる太郎。大きく胸を膨らませ横にひねるように上体を起こすと硬くなった乳首が上を向いてツンと勃った。
「いやらしい身体だなあ。ムッチリとしてて本当にエロいよ」
倉田さん、その乳首に舌をつけて転がす
「ああっ」
「本当にヒロさんの前で…… 興奮するの?」
「う、うん。あああ」
「チンポ出すよ」
倉田さんは最後のパンツに手のひらを当てて盛り上がった部分をゆっくりと回すように撫でた。
「ああ、はあああっ」
太郎はゴツい身体をくねらせてソファーの上で身悶えた。
パンツは徐々に下され、すでに硬く膨れ上がったチンポがむき出された。亀頭の先から透明の汁を漏らして倉田さんの手を濡らした。
「ああ、すごい。もうこんなになってるよ」
倉田さんは手に付いた我慢汁の糸を引いて見せた。
「あああ」
決して強引ではない、しかし確かな誘導で俺と太郎を導いた。大きく暖かい空気がアブノーマルな世界にあってふたりを安堵させた。
倉田さんと太郎が一緒にシャワーを浴びてその後俺が浴びた。バスルームから出ると二人は照明を落とした暗い寝室のベッドの上だった。
倉田さんの身体は思いのほか筋肉質だった。腹から胸にかけて体毛がしっかりと生えていてその毛は黒々としていた。太郎はその生えた毛に顔を埋めて倉田さんに抱きついていた。
倉田さんはそんな太郎の身体を優しく離すと仰向けに転がした。
「ケツマンコ見せて」
太郎は言われるまま脚を持ち上げて開いた。すると倉田さんはサイドテーブルにあったリモコンで照明を明るくした。
「あああ」
「よく見せて。太郎くんのケツマンコもっと開いて見せて」
「ああ、はああ」
「ほら、ヒロさんがチンポしごきながら見てるよ」
太郎は泣きそうな顔で俺を見た。脚を大きく上げて倉田さんにケツマンコを向けながら俺を見た。
「気持ちいい?」
「はあああ、う、うん」
太郎は顔を真っ赤にして俺にうなずいた。
「ヒロさんもおいで」
倉田さんはそう言いながら俺に手を差し伸べた。俺はベッドに上がると倉田さんのそばに座った。
「ふたりでヤってるところ見せてよ。いつもヤってるようにさ」
太郎を見ると顔を火照らせて脚を開いて待っているように見えた。俺は太郎の股のあいだに身体を寄せて開いたケツマンコを舐めた。
「はあああっ!」
太郎は激しく身悶えて身体をくねらせる。ふたりの時とは違い激しく興奮する。
「ああ凄いなあ」
倉田さんは太郎の乳首に吸い付いて甘く歯を立てた。
ひとりは今付き合っている彼氏。もうひとりは今日初めて出会った熟年男。太郎は二人に身体中舐められながらその禁断の快感を味わった。
おもむろに俺の身体に抱きつく倉田さん。
「ヒロさんはどうなの? ここ」
そう言って俺のケツ穴に手を伸ばした。
「俺は……」
「ヤったことあるんでしょ?」
「い、いや。最近は」
「感じる?」
「ど、どうかな」
俺は太郎に覆いかぶさったままケツ穴をいじられた。そのうちローションを塗られ指が挿入された。
「あああ!」
「すごい! 感じるじゃない」
俺の顔を見つめる太郎。その表情は泣き出しそうで、それでいて興奮しているような、とても複雑な顔だった。俺が「ああっ」と声を漏らすと同調して口を開く太郎。そして俺も情けない顔になってまた声を漏らす。
太郎がこんな俺を見るのは初めてだった。しかも太郎ではなく別の男が俺を責めているのだ。いつもの立場が逆転してしまったことに戸惑う太郎そして俺。
「うううっ!」
倉田さんのチンポが俺の中に。ゆっくりゆっくりと。その表情を太郎が真下で見ている。
「ほら、根元まで入った」
倉田さんの言葉に反応する太郎。
「あああ。チ、チンポ入ったの?」
「あああ、はあああ」
「チンポ入れられたの?」
太郎はなぜか動揺し俺の顔を見つめた。
「気持ちいいの?」
「はああああ」
倉田さんはゆっくりとゴツい腰を前後させてチンポを出し入れし始めた。
「ああっ、ああっ、ああっ、ああっ」
「ヒ、ヒロさん。ヒロさん! 気持ちいいの?」
「ああっ! ああっ! ああっ! あああっ!」
腹の内側をかき回されるような快感に痺れて太郎の言葉に答えられない。
太郎はそんな俺の表情を見ながら涙を流した。
つづく
■作者メッセージ
読んでいただきありがとうございます。
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次回、最終回です。
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