第4話 タカシ
十数年前はよくゲイバーで遊んでいた。今は行かなくなって久しい。なにがきっかけだったのかは忘れたけど突然やめた。
その当時、知り合ったのがタカシ。俺と同世代で気が合った。ガチムチのモテ筋で俺もイケたからそのままホテルに。でも全く相性が合わずにそのまま終了。(笑) まずどっちも基本タチで同じようなタイプのウケが好みという。相手に合わせて甘えたり甘えられたり出来ればいいんだけど二人ともそんな器用なことはできない。
それ以降も時々連絡したり呑みに行ったりする間柄。俺としてはゲイの友達がいるということが今となっては貴重な存在でタカシは大事な友人だ。三年ほど前に二駅向こうの隣町に引っ越してきてから、また頻繁《ひんぱん》に顔を合わすようになった。
「で? 彼氏とはうまくやってるの?」
リビングのテーブルいっぱいに袋から出したタグ付きのTシャツを並べて、ニヤニヤしているタカシ。
「おっ! これってMLB公式のTシャツじゃないの? しかも限定品なんだ。いいねえ!」(*MLB:メジャーリーグベースボール)
「ごまかすなっ」笑
タカシはアパレル関係の仕事をしていて時々海外に出張することがある。帰ってくるといつもお土産を持ってウチにやってくる。今日も勤め帰りのスーツ姿で大きな袋を持って現れた。
「一枚好きなの選びなよ」
「限定品は悪いからなあ」
「べつにいいよ」
「いや、じゃあこれかな」
「へへ。やっぱりな。それ選ぶと思ったよ」笑
「うそこけ! 適当なこと言いやがって。お前になにがわかる、この俺のセンスの」
「ふふっ。で、それいつ着んだよ」笑
「かわいいじゃん。ピンクのクマさん」
「べつにいいけど」笑
歳が近いとか性癖が似てる(笑)とかあるけど、いまも付き合っていられるのはお互いのことをよく分かり合えてるからだと思う。体の関係を意識しない分フラットな感覚でいられるんだ。
「ささっ。用事が済んだら帰ってくれ」
「な、なんだよその言いぐさは。せっかく土産持ってきてやったのにさあ」
「ああ、そうだな。ありがとう。じゃあさようなら」
「あん……? はてさてえ? なになにい? 誰か来るのか?」
「明日も早いんだろ? 早く帰って寝れ」
「明日は日曜日」
「いいからとっとと帰りやがれっ」
「もしかして太郎ちゃん? ねえ? 太郎ちゃんくるの?」
「ちゃん付けで呼ぶな」
「なあ、会わしてよ。いいじゃん。オレ顔も見せてもらってないんだけど」
「絶対見せない! そんな危険なこと絶対できない!」
「だからさあ。友達の彼氏に手え出すようなことしないって」
「分かってんだよ。お前のタイプは。俺と一緒なんだよ。ドストライクなんだよ」
「顔見るくらいいいじゃん」
プルルルルル。
「あっ! 太郎ちゃんだ! そうだろ!? 出ろ! 電話出ろ! ほらっ! すぐ出ろ!」
「あー、もしもし。…… うん。うん。そうだなあ、もう少しかかるかなあ。うん。そうだね。いや、うん。すぐすぐ。うん……」
「あーあー! 太郎ちゃん!? 太郎ちゃんかなあ!! こんにち…… い、痛てえ!」
「えっ? ううん。いいの。ゴリラが暴れてるだけ。うん。すぐ追い出すから。うん。大丈夫だよ」
「こんにちはあ! こんにちはあ! 太郎ちゃーん! タカシ! オレ、タカシですうう! 痛だだだっ!」
「ええっ!? 来なくていいよ。すぐ済むから。追い出したら連絡するからさ。えっ!? もう来てるの? どこ? 下? マンションの?」
ピンポーン。
エントランスの前に立つ太郎がモニターに映っている。
「どうぞ」
「なに勝手に開けてんだよ」
「めちゃくちゃかわいいじゃんか。お、おい! こらっ!」
「やっばいなあ。この事態だけは避けたかったんだよなあ。いいか。絶対変なことするなよ。なっ! マジで!」
「アイ ウォントゥ タッチ ヒムッ!」
「だまれっ」
すこしして扉を開けると太郎が立っていた。
「来ちゃった」笑
「う、うん。いいけどさ。いろいろ注意事項があるから俺の言うことをよおーく聞いて……」
「あっ! こんにちは! タカシです! 初めまして!」
「あ、ども」
「いいから向こうで座ってろよ」
ゴリラをリビングの一番奥に座らせて太郎をテーブルを挟んで座らせる。
「た、太郎。なんだその目は」
「えっ? ああ」
「もおお…… 分かってんだよ。お前こういうゴツいオヤジ、タイプだからなあ」
「えっ!? オレタイプなの? わああ! じゃあオレと付き合おうっか。ねっ。こんな変態オヤジなんかやめてさ」
「いいか太郎。こういう下品で品性のないオヤジだけはやめとけよ。こいつに泣かされた可哀想な男いっぱいいるんだぞ」
「ちょっ。それはないよ。オレ好きになったらゾッコンだかんな」
「ゾッ、ゾッコン。ふふ」笑
「ほら笑われたあ、今時ゾッコンって…… 意味わかんねえよ。なあ太郎」
「わかるよ。よく聞くし」
「オヤジとばっか喋ってるからだろっ!」
「太郎ちゃんに当たることないだろう」
「ちゃん付けすんなっ」
ひっちゃかめっちゃかが一段落。
結局またコーヒーを淹れなおす。
「太郎ちゃんって何してる人?」
「タカシ」
「なんだよ?」
「俺たちさ。そういうこと詮索しないようにしてるんだ」
「そうなの? なんで?」
「なんでって。それは……」
「なんとなくそんな感じなんです。別に決めてるわけじゃないんですけど」
太郎がうれしそうに笑う。
「キミたち変だよ。付き合ってるんだろ?」
「うん。今は仮だけど」
「なんだよ仮って。なんかさ、それってヒロらしいよなあ。太郎ちゃんさあ、気をつけなよ。このオヤジ相当な変態だかんな」
「へへ。でもそういうとこがいいかも」
「た、太郎ちゃあん…… やめて。興奮するから」
「いい加減にしろよお! おらあ!」
「冗談だよ」
「あ、オレコンピュータの仕事してるんです」
「太郎。そうなの?」
「うん。派遣だけどね」
「へえ。人は見掛けに…… だね」
「そうですか?」
「うん。バリバリガテン系っぽいから」
「すぐ太っちゃうからジムでなんとかやってます」
「あ、そうだ。いま使ってるノートパソコン調子悪くてさあ。今度買い替えようと思ってんだけど、どんなのがいいか分かんないんだよね。良いの知ってる?」
「壊れちゃったんですか?」
「動くんだけど処理が遅くって使えないんだよ。まだ二年くらいしか経ってないんだけどさ」
「今あります? パソコン」
「え、うん。あるけど」
「ちょっと見てみましょうか?」
「えっ?」
タカシは持ち歩いているビジネスバッグからノートパソコンを取り出してテーブルに置いた。
「太郎解るの?」
「どうかな。ちょっと見てみないとわかんないけど」
タカシの認証で画面を表示させ、太郎に見せるとものすごい速さでキーを叩きはじめた。
「いつも検索検索って言ってるからパソコン使いこなしてるんだなあとは思ってたけど……」
「なにこの真っ黒な昔のコンピュータ画面みたいなの?」
「これコマンドプロンプトっていっていつも使ってるGUIを通さずに直接OSにアクセスしてるんです」
「へ、へえ。そうなの」
「タカシぃ(笑)解ったような返事しやがって」
「お前だって解ってねえだろ」
「太郎ちゃんさ、コンピュータの仕事ってなにやってるの」
「プログラマーなんです」
「へえ。ITじゃん」
「いえ、そうじゃないんですけどね」
「そうなの?」
「あっ、これかな」
「えっ?」
「このパソコンって何に使ってるんですか?」
「仕事だよ。メールしたり文章書いたり、あとファッション関係に使う画像とか見ることもあるけど」
「その時って動きが遅くなったりします?」
「うーん、どうかなあ。そうだね。確かにそんときはそうでもないかな」
「インターネットしてる時はどうですか?」
「そうそう。そうなんだよ。ネット使いだすと急に遅くなっちゃうんだよね。動画とかだともう全く動かない」
「これ見るとブラウザーを開くと自動的に十数個のプログラムが立ち上がって見えないところで動いてるんです」
「へっ?」
「わっ! わっ! 変なエロサイトでウイルスに感染してやんの! プププッ」笑
「ち、ちがうだろ」
「多分そうです」
「がはははははっ! ざまあ! そん歳になってもまあだエロサイト見まくってんのかよ! なにが仕事ですうだよ! がっはっはっはっ! 太郎気をつけろよお、こいつ相当根暗ムッツリ隠れシコシコ野郎だぞお!」
「た、太郎ちゃあん……」
「でもこれ悪性のウイルスじゃないと思いますよ。ただの広告かな」
「そうなの?」
「うん。広告画面を裏に表示して消されないようにしてるんだな。たぶん広告収入目当ての昔流行ったウイルスですね。でももう削除したから大丈夫だと思います」
「おっほんとだ! ネットがサクサクできる! 直ってる! すげえ!」
「まだぜんぜん使えると思いますよこのパソコン」
「ありがとう! データ移したりとか面倒だなあって思ってたんだよ。よかったあ。すごいなあ太郎ちゃん!」
「いえ」
「付き合って」
「ふざけんなよゴラァー!」
「冗談だろお」
早々にゴリラを返して二人で飯食って風呂入ってベッド入って。……
「さっきさ、IT系じゃないって言ってたよね」
「うん。スマホとかのアプリじゃなくって工場にある無人機械の制御システム作ってるの。あの中にも機械を動かすプログラムが入ってるんだよ」
「へえ。半分太郎っぽいかも」笑
「なんだよそれ」笑
「太郎ってさやっぱ理数系脳なんだよなあ」
「え、そう?」
俺の腕枕で密着する太郎。
「ほら、相手のことが解るまで付き合えないってそういうことじゃん」
「どうして?」
「なんていうか。たぶん太郎の中に付き合ってもいい男の理想の形があるんじゃないのかな。答えっていうか」
「ん。そうかも」
「付き合ってからそうじゃなかったってことになるのが嫌なんだろ?」
「うん。裏切られたっていう気持ちより後悔の方が強いかも」
「でもさあ。そんな完璧な答えを示せる男っているのかなあ」
「…………」
「俺はそんなきっちりとした考え方できないからよく分からないけどな」
「ヒロさんって何脳なの?」
「俺か? そうだなあ。なんだろう」
「オレの仕事言ったからヒロさんの仕事も教えてよ。会社員なんでしょ?」
「そうだよ。べつにこれといってなにもないけどね。金属加工のメーカーで働くふつうの中間管理職のオヤジだよ」
「オレヒロさんのスーツ姿が好きなんだ」
「今度スーツ着てヤるか? 作業着もあるぜ」
「くくくっ。(笑)コスプレじゃん。タカシさんもスーツかっこよかったなあ」
「いいか! ああいう男には絶対に近づいちゃあ……」
「わかってるよ。(笑)」
「マジだからな!」
「オレさあちょっと疑ってたんだ」
「なにを?」
「タカシさんのこと。だって話はするけど絶対に会わせてくれなかったじゃん。もしかしたら友達じゃなくて、そういう関係の男なのかなあって」
「俺が怖かったのはタカシじゃなくって太郎なんだぜ」
「えっ」
「太郎はああいう見た目もそうだけど、はっきりとものをいう力強い男に惚れちまうからなあ」
「よく分かるね」笑
「太郎が本気になるのが怖かったのさ」
「うん……」
「ああっ!」
「わあ、びっくりしたあ!」
「わざと来たんだろ! なあ。約束の時間より早かったのはタカシを確認するためだったんだろ、なあ?」
「へへへ。うん」
「そっかあ、俺まだまだ信用されてないんだなあ」
「ごめん……」
「俺がんばるよ! なっ」
「ヒロさんってマジでいい人なんだね」
「知らなかった? 昔っからそうだよ」笑
太郎がゴツい脚を俺の腰に絡めて密着して甘えてくる。今ならどんなに超えられない壁でもこのかわいい男のためならなんでもできると俺は思った。
「ヒロさんの筋肉って本物?」
「どういうこと?」
「スポーツ選手してた?」
「うん。学生の頃はずっとラグビー選手だったよ」
「やっぱりなあ。オレさコンプレックスがあるんだよね」
「なんだよ?」笑
「どんなにジムで鍛《きた》えても本物には勝てないなあって思っちゃうんだよね」
「太郎のガチムチすげえ好きなんだけど。俺なんかもうムチムチでオヤジ丸出しだからな」
「でも本物なんだよなあ。…… これも。これも。これも」
太郎は俺の首、肩、二の腕と人差し指で押さえていく。
「これは? これはなんの筋肉?」
「ん? これは…… これはタックルで敵をぶっ倒す筋肉」
「くくっ(笑) じゃあこれは?」
「スクラムでぶっつぶす筋肉」
「じゃあこれは?」
「キックでボールを遠くへ飛ばす筋肉」
「それじゃあ、これは?」
「これは…… これは太郎のケツマンコにズボズボする筋肉」
「すげえガチガチだね」
「今日も鍛えなきゃな」
気のせいかもしれないけど、二人でヤるときの太郎はいつもどこか予定調和で義務的な感じがしていた。少なくとも他のオヤジと絡んでいる太郎とはあきらかに違っていた。
でも今日の太郎は積極的だった。
それはなにか思うことがあったのか、それともタカシという疑惑が晴れて俺のことを少し信用することができたからなのか。
太郎は仰向けになった俺を跨《また》いでギンギンに勃起したチンポをゆっくりと腰を落としながら自分で挿入した。
「あ、あああっ」
「おお、すっげ」
「は、入った」
「奥まで入ってるよ」
「あああすっげえいい! きもちいい!」
デッカい腰をおもいきり押し付けてギシギシとベッドで弾む。
「チンポ入ってるとこもっと見せて。ほら、後ろに手ェついて。そうそう。あああ、すっげえ。丸見え! 太郎のケツマンコに俺のチンポズボズボ入ってんぜ!」
「ああ! ああ! はああ! あっはあああ!」
「おお、おおお! き、きもちいい!」
「もっと! もっと! チンポもっと!」
「こうか!? ああ? こうか? ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんんっ!」
「あああっ! あああっ! ああんっ! ああんっ!」
「ああ、た、太郎すげえ。自分で腰動かしてチンポズボズボヤってんの? ああすっげえエロい」
「はああっ! あっはああっ! あっはあああっ! あああああ」
ブチュッ! ベチュッ! ブチュッ! ベチュッ!
「ああんっ! はあんっ! はああっ! あああっ!」
ブッチュッ! ベッチュッ! ブッチュッ! ベッチュッ!
「ふんっ! ふんっ! ふんっ! イっていい? いい? 太郎やべえよ!」
「はあっ! はあっ! 中に! 中に入れて! いっぱい! いっぱい入れて!」
「いいの? イクよ! 出すよ! 中に出すよ! ふんっ! ふうんっ!
ふうんっ! ふっ! あああ!」
「お、お、奥に! いっぱい奥に入れ…… ああっ!」
「イクッ! うっ! うっ! うっ! ううっ! ううっ!」
「あ、あ、あ、あ、あ、はあああ……」
太郎のケツマンコのヒダが生き物のようにうごめいて、俺のチンポからザーメンをしぼり取る。強く腰を押し付けて吸い取るように飲み込んでいく。
「あ、あああ。た、太郎、きつい!」
「うう、ううう」
太郎は身体を震わせながら俺に抱きついていつまでもチンポを離さなかった。
…………
シャワーを終えてリビングで水を飲んでいると奥のイスに紙袋が置いてあるのに気がついた。
「そうだ。タカシが太郎にもお土産くれたんだよ」
「えっそうなの。やった!」
「これ。開けてみ」
そう言ってベッドにいる太郎にその袋を投げて渡した。
「なんだろ」
太郎が袋から取り出したのはTシャツだった。
「ほら、これかわいい」
大きく広げて高々と俺に見せるそのシャツにはラフなタッチで描かれたピンクのクマのイラストがあった。
「えっ! マジか……」
「え?」
「い、いや。ほら」
俺はイスの背もたれにひっかけていた自分が選んだTシャツを太郎に見せた。
「わっはあ! おそろいっ。くくくっ。どうする? ねえ。これ着てドライブする?(笑) はははは!」
タカシは俺のこと全部お見通しってことか。……
あいつが太郎の話をしていたのは単なる興味本位ではなかったのか。…… 事実、お互いの仕事や内面の思いなんかを知ることができたし、なにより太郎のタカシに対する心配事も払拭できたわけだ。
相手を理解するってこと…… もしかすると俺が一番分かってなかったってこと?
『おまえこそ本当に彼のこと信用しているのか?』
ベッドの上ではしゃぐ太郎を見ていると、ふとそんなタカシの声が聞こえたような気がした。
つづく
その当時、知り合ったのがタカシ。俺と同世代で気が合った。ガチムチのモテ筋で俺もイケたからそのままホテルに。でも全く相性が合わずにそのまま終了。(笑) まずどっちも基本タチで同じようなタイプのウケが好みという。相手に合わせて甘えたり甘えられたり出来ればいいんだけど二人ともそんな器用なことはできない。
それ以降も時々連絡したり呑みに行ったりする間柄。俺としてはゲイの友達がいるということが今となっては貴重な存在でタカシは大事な友人だ。三年ほど前に二駅向こうの隣町に引っ越してきてから、また頻繁《ひんぱん》に顔を合わすようになった。
「で? 彼氏とはうまくやってるの?」
リビングのテーブルいっぱいに袋から出したタグ付きのTシャツを並べて、ニヤニヤしているタカシ。
「おっ! これってMLB公式のTシャツじゃないの? しかも限定品なんだ。いいねえ!」(*MLB:メジャーリーグベースボール)
「ごまかすなっ」笑
タカシはアパレル関係の仕事をしていて時々海外に出張することがある。帰ってくるといつもお土産を持ってウチにやってくる。今日も勤め帰りのスーツ姿で大きな袋を持って現れた。
「一枚好きなの選びなよ」
「限定品は悪いからなあ」
「べつにいいよ」
「いや、じゃあこれかな」
「へへ。やっぱりな。それ選ぶと思ったよ」笑
「うそこけ! 適当なこと言いやがって。お前になにがわかる、この俺のセンスの」
「ふふっ。で、それいつ着んだよ」笑
「かわいいじゃん。ピンクのクマさん」
「べつにいいけど」笑
歳が近いとか性癖が似てる(笑)とかあるけど、いまも付き合っていられるのはお互いのことをよく分かり合えてるからだと思う。体の関係を意識しない分フラットな感覚でいられるんだ。
「ささっ。用事が済んだら帰ってくれ」
「な、なんだよその言いぐさは。せっかく土産持ってきてやったのにさあ」
「ああ、そうだな。ありがとう。じゃあさようなら」
「あん……? はてさてえ? なになにい? 誰か来るのか?」
「明日も早いんだろ? 早く帰って寝れ」
「明日は日曜日」
「いいからとっとと帰りやがれっ」
「もしかして太郎ちゃん? ねえ? 太郎ちゃんくるの?」
「ちゃん付けで呼ぶな」
「なあ、会わしてよ。いいじゃん。オレ顔も見せてもらってないんだけど」
「絶対見せない! そんな危険なこと絶対できない!」
「だからさあ。友達の彼氏に手え出すようなことしないって」
「分かってんだよ。お前のタイプは。俺と一緒なんだよ。ドストライクなんだよ」
「顔見るくらいいいじゃん」
プルルルルル。
「あっ! 太郎ちゃんだ! そうだろ!? 出ろ! 電話出ろ! ほらっ! すぐ出ろ!」
「あー、もしもし。…… うん。うん。そうだなあ、もう少しかかるかなあ。うん。そうだね。いや、うん。すぐすぐ。うん……」
「あーあー! 太郎ちゃん!? 太郎ちゃんかなあ!! こんにち…… い、痛てえ!」
「えっ? ううん。いいの。ゴリラが暴れてるだけ。うん。すぐ追い出すから。うん。大丈夫だよ」
「こんにちはあ! こんにちはあ! 太郎ちゃーん! タカシ! オレ、タカシですうう! 痛だだだっ!」
「ええっ!? 来なくていいよ。すぐ済むから。追い出したら連絡するからさ。えっ!? もう来てるの? どこ? 下? マンションの?」
ピンポーン。
エントランスの前に立つ太郎がモニターに映っている。
「どうぞ」
「なに勝手に開けてんだよ」
「めちゃくちゃかわいいじゃんか。お、おい! こらっ!」
「やっばいなあ。この事態だけは避けたかったんだよなあ。いいか。絶対変なことするなよ。なっ! マジで!」
「アイ ウォントゥ タッチ ヒムッ!」
「だまれっ」
すこしして扉を開けると太郎が立っていた。
「来ちゃった」笑
「う、うん。いいけどさ。いろいろ注意事項があるから俺の言うことをよおーく聞いて……」
「あっ! こんにちは! タカシです! 初めまして!」
「あ、ども」
「いいから向こうで座ってろよ」
ゴリラをリビングの一番奥に座らせて太郎をテーブルを挟んで座らせる。
「た、太郎。なんだその目は」
「えっ? ああ」
「もおお…… 分かってんだよ。お前こういうゴツいオヤジ、タイプだからなあ」
「えっ!? オレタイプなの? わああ! じゃあオレと付き合おうっか。ねっ。こんな変態オヤジなんかやめてさ」
「いいか太郎。こういう下品で品性のないオヤジだけはやめとけよ。こいつに泣かされた可哀想な男いっぱいいるんだぞ」
「ちょっ。それはないよ。オレ好きになったらゾッコンだかんな」
「ゾッ、ゾッコン。ふふ」笑
「ほら笑われたあ、今時ゾッコンって…… 意味わかんねえよ。なあ太郎」
「わかるよ。よく聞くし」
「オヤジとばっか喋ってるからだろっ!」
「太郎ちゃんに当たることないだろう」
「ちゃん付けすんなっ」
ひっちゃかめっちゃかが一段落。
結局またコーヒーを淹れなおす。
「太郎ちゃんって何してる人?」
「タカシ」
「なんだよ?」
「俺たちさ。そういうこと詮索しないようにしてるんだ」
「そうなの? なんで?」
「なんでって。それは……」
「なんとなくそんな感じなんです。別に決めてるわけじゃないんですけど」
太郎がうれしそうに笑う。
「キミたち変だよ。付き合ってるんだろ?」
「うん。今は仮だけど」
「なんだよ仮って。なんかさ、それってヒロらしいよなあ。太郎ちゃんさあ、気をつけなよ。このオヤジ相当な変態だかんな」
「へへ。でもそういうとこがいいかも」
「た、太郎ちゃあん…… やめて。興奮するから」
「いい加減にしろよお! おらあ!」
「冗談だよ」
「あ、オレコンピュータの仕事してるんです」
「太郎。そうなの?」
「うん。派遣だけどね」
「へえ。人は見掛けに…… だね」
「そうですか?」
「うん。バリバリガテン系っぽいから」
「すぐ太っちゃうからジムでなんとかやってます」
「あ、そうだ。いま使ってるノートパソコン調子悪くてさあ。今度買い替えようと思ってんだけど、どんなのがいいか分かんないんだよね。良いの知ってる?」
「壊れちゃったんですか?」
「動くんだけど処理が遅くって使えないんだよ。まだ二年くらいしか経ってないんだけどさ」
「今あります? パソコン」
「え、うん。あるけど」
「ちょっと見てみましょうか?」
「えっ?」
タカシは持ち歩いているビジネスバッグからノートパソコンを取り出してテーブルに置いた。
「太郎解るの?」
「どうかな。ちょっと見てみないとわかんないけど」
タカシの認証で画面を表示させ、太郎に見せるとものすごい速さでキーを叩きはじめた。
「いつも検索検索って言ってるからパソコン使いこなしてるんだなあとは思ってたけど……」
「なにこの真っ黒な昔のコンピュータ画面みたいなの?」
「これコマンドプロンプトっていっていつも使ってるGUIを通さずに直接OSにアクセスしてるんです」
「へ、へえ。そうなの」
「タカシぃ(笑)解ったような返事しやがって」
「お前だって解ってねえだろ」
「太郎ちゃんさ、コンピュータの仕事ってなにやってるの」
「プログラマーなんです」
「へえ。ITじゃん」
「いえ、そうじゃないんですけどね」
「そうなの?」
「あっ、これかな」
「えっ?」
「このパソコンって何に使ってるんですか?」
「仕事だよ。メールしたり文章書いたり、あとファッション関係に使う画像とか見ることもあるけど」
「その時って動きが遅くなったりします?」
「うーん、どうかなあ。そうだね。確かにそんときはそうでもないかな」
「インターネットしてる時はどうですか?」
「そうそう。そうなんだよ。ネット使いだすと急に遅くなっちゃうんだよね。動画とかだともう全く動かない」
「これ見るとブラウザーを開くと自動的に十数個のプログラムが立ち上がって見えないところで動いてるんです」
「へっ?」
「わっ! わっ! 変なエロサイトでウイルスに感染してやんの! プププッ」笑
「ち、ちがうだろ」
「多分そうです」
「がはははははっ! ざまあ! そん歳になってもまあだエロサイト見まくってんのかよ! なにが仕事ですうだよ! がっはっはっはっ! 太郎気をつけろよお、こいつ相当根暗ムッツリ隠れシコシコ野郎だぞお!」
「た、太郎ちゃあん……」
「でもこれ悪性のウイルスじゃないと思いますよ。ただの広告かな」
「そうなの?」
「うん。広告画面を裏に表示して消されないようにしてるんだな。たぶん広告収入目当ての昔流行ったウイルスですね。でももう削除したから大丈夫だと思います」
「おっほんとだ! ネットがサクサクできる! 直ってる! すげえ!」
「まだぜんぜん使えると思いますよこのパソコン」
「ありがとう! データ移したりとか面倒だなあって思ってたんだよ。よかったあ。すごいなあ太郎ちゃん!」
「いえ」
「付き合って」
「ふざけんなよゴラァー!」
「冗談だろお」
早々にゴリラを返して二人で飯食って風呂入ってベッド入って。……
「さっきさ、IT系じゃないって言ってたよね」
「うん。スマホとかのアプリじゃなくって工場にある無人機械の制御システム作ってるの。あの中にも機械を動かすプログラムが入ってるんだよ」
「へえ。半分太郎っぽいかも」笑
「なんだよそれ」笑
「太郎ってさやっぱ理数系脳なんだよなあ」
「え、そう?」
俺の腕枕で密着する太郎。
「ほら、相手のことが解るまで付き合えないってそういうことじゃん」
「どうして?」
「なんていうか。たぶん太郎の中に付き合ってもいい男の理想の形があるんじゃないのかな。答えっていうか」
「ん。そうかも」
「付き合ってからそうじゃなかったってことになるのが嫌なんだろ?」
「うん。裏切られたっていう気持ちより後悔の方が強いかも」
「でもさあ。そんな完璧な答えを示せる男っているのかなあ」
「…………」
「俺はそんなきっちりとした考え方できないからよく分からないけどな」
「ヒロさんって何脳なの?」
「俺か? そうだなあ。なんだろう」
「オレの仕事言ったからヒロさんの仕事も教えてよ。会社員なんでしょ?」
「そうだよ。べつにこれといってなにもないけどね。金属加工のメーカーで働くふつうの中間管理職のオヤジだよ」
「オレヒロさんのスーツ姿が好きなんだ」
「今度スーツ着てヤるか? 作業着もあるぜ」
「くくくっ。(笑)コスプレじゃん。タカシさんもスーツかっこよかったなあ」
「いいか! ああいう男には絶対に近づいちゃあ……」
「わかってるよ。(笑)」
「マジだからな!」
「オレさあちょっと疑ってたんだ」
「なにを?」
「タカシさんのこと。だって話はするけど絶対に会わせてくれなかったじゃん。もしかしたら友達じゃなくて、そういう関係の男なのかなあって」
「俺が怖かったのはタカシじゃなくって太郎なんだぜ」
「えっ」
「太郎はああいう見た目もそうだけど、はっきりとものをいう力強い男に惚れちまうからなあ」
「よく分かるね」笑
「太郎が本気になるのが怖かったのさ」
「うん……」
「ああっ!」
「わあ、びっくりしたあ!」
「わざと来たんだろ! なあ。約束の時間より早かったのはタカシを確認するためだったんだろ、なあ?」
「へへへ。うん」
「そっかあ、俺まだまだ信用されてないんだなあ」
「ごめん……」
「俺がんばるよ! なっ」
「ヒロさんってマジでいい人なんだね」
「知らなかった? 昔っからそうだよ」笑
太郎がゴツい脚を俺の腰に絡めて密着して甘えてくる。今ならどんなに超えられない壁でもこのかわいい男のためならなんでもできると俺は思った。
「ヒロさんの筋肉って本物?」
「どういうこと?」
「スポーツ選手してた?」
「うん。学生の頃はずっとラグビー選手だったよ」
「やっぱりなあ。オレさコンプレックスがあるんだよね」
「なんだよ?」笑
「どんなにジムで鍛《きた》えても本物には勝てないなあって思っちゃうんだよね」
「太郎のガチムチすげえ好きなんだけど。俺なんかもうムチムチでオヤジ丸出しだからな」
「でも本物なんだよなあ。…… これも。これも。これも」
太郎は俺の首、肩、二の腕と人差し指で押さえていく。
「これは? これはなんの筋肉?」
「ん? これは…… これはタックルで敵をぶっ倒す筋肉」
「くくっ(笑) じゃあこれは?」
「スクラムでぶっつぶす筋肉」
「じゃあこれは?」
「キックでボールを遠くへ飛ばす筋肉」
「それじゃあ、これは?」
「これは…… これは太郎のケツマンコにズボズボする筋肉」
「すげえガチガチだね」
「今日も鍛えなきゃな」
気のせいかもしれないけど、二人でヤるときの太郎はいつもどこか予定調和で義務的な感じがしていた。少なくとも他のオヤジと絡んでいる太郎とはあきらかに違っていた。
でも今日の太郎は積極的だった。
それはなにか思うことがあったのか、それともタカシという疑惑が晴れて俺のことを少し信用することができたからなのか。
太郎は仰向けになった俺を跨《また》いでギンギンに勃起したチンポをゆっくりと腰を落としながら自分で挿入した。
「あ、あああっ」
「おお、すっげ」
「は、入った」
「奥まで入ってるよ」
「あああすっげえいい! きもちいい!」
デッカい腰をおもいきり押し付けてギシギシとベッドで弾む。
「チンポ入ってるとこもっと見せて。ほら、後ろに手ェついて。そうそう。あああ、すっげえ。丸見え! 太郎のケツマンコに俺のチンポズボズボ入ってんぜ!」
「ああ! ああ! はああ! あっはあああ!」
「おお、おおお! き、きもちいい!」
「もっと! もっと! チンポもっと!」
「こうか!? ああ? こうか? ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんんっ!」
「あああっ! あああっ! ああんっ! ああんっ!」
「ああ、た、太郎すげえ。自分で腰動かしてチンポズボズボヤってんの? ああすっげえエロい」
「はああっ! あっはああっ! あっはあああっ! あああああ」
ブチュッ! ベチュッ! ブチュッ! ベチュッ!
「ああんっ! はあんっ! はああっ! あああっ!」
ブッチュッ! ベッチュッ! ブッチュッ! ベッチュッ!
「ふんっ! ふんっ! ふんっ! イっていい? いい? 太郎やべえよ!」
「はあっ! はあっ! 中に! 中に入れて! いっぱい! いっぱい入れて!」
「いいの? イクよ! 出すよ! 中に出すよ! ふんっ! ふうんっ!
ふうんっ! ふっ! あああ!」
「お、お、奥に! いっぱい奥に入れ…… ああっ!」
「イクッ! うっ! うっ! うっ! ううっ! ううっ!」
「あ、あ、あ、あ、あ、はあああ……」
太郎のケツマンコのヒダが生き物のようにうごめいて、俺のチンポからザーメンをしぼり取る。強く腰を押し付けて吸い取るように飲み込んでいく。
「あ、あああ。た、太郎、きつい!」
「うう、ううう」
太郎は身体を震わせながら俺に抱きついていつまでもチンポを離さなかった。
…………
シャワーを終えてリビングで水を飲んでいると奥のイスに紙袋が置いてあるのに気がついた。
「そうだ。タカシが太郎にもお土産くれたんだよ」
「えっそうなの。やった!」
「これ。開けてみ」
そう言ってベッドにいる太郎にその袋を投げて渡した。
「なんだろ」
太郎が袋から取り出したのはTシャツだった。
「ほら、これかわいい」
大きく広げて高々と俺に見せるそのシャツにはラフなタッチで描かれたピンクのクマのイラストがあった。
「えっ! マジか……」
「え?」
「い、いや。ほら」
俺はイスの背もたれにひっかけていた自分が選んだTシャツを太郎に見せた。
「わっはあ! おそろいっ。くくくっ。どうする? ねえ。これ着てドライブする?(笑) はははは!」
タカシは俺のこと全部お見通しってことか。……
あいつが太郎の話をしていたのは単なる興味本位ではなかったのか。…… 事実、お互いの仕事や内面の思いなんかを知ることができたし、なにより太郎のタカシに対する心配事も払拭できたわけだ。
相手を理解するってこと…… もしかすると俺が一番分かってなかったってこと?
『おまえこそ本当に彼のこと信用しているのか?』
ベッドの上ではしゃぐ太郎を見ていると、ふとそんなタカシの声が聞こえたような気がした。
つづく
■作者メッセージ
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