連載小説
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岩田との出会い
私は定年退職を迎え、これまでが仕事一筋でしたのでのんびり過ごそうと思い、公園を散歩する程度しか時間を潰すくらいしか趣味がありませんでした。

私には長年連れ添っている嫁と、娘、息子がおり、娘は数年前に結婚し、息子は未だに独身で彼女の1人はいるかも分かりません。

嫁との行為は何年も前に終わっていて、私は男性としての役目はとうに終わりを迎えたのだと思いました。

毎日が日曜日とはよく言ったもので、あれだけ毎日を忙しくしていた日々の方が楽しかったくらいにやることがありません。

その日もいつもと同じように家から公園までを散歩し、公園でベンチに座って休むというだけの日課を過ごしていました。

定年を迎えて3ヶ月ほど同じ毎日の繰り返しで、趣味の一つでも作っておけばよかったと後悔しています。

いつものようにベンチに腰をかけて、ただボーっと周りを見つめていると、一人の老人から声をかけられました。

彼は『岩田』と名乗る人物で、見た目は額が薄く、白髪で眼鏡をかけていて、恰幅が良い体型でした。

岩田からは毎日見かけるので、私とお仲間ですねという話題から始まり、何気ない話をずっと繰り返すだけでした。

私としては家族以外の誰かと話すのは久方振りでしたので、思えば初対面とはいえ、緊張もしていなかったと思います。

岩田は公園の近所に住んでいて、結婚はしておらず一人住まいだという。

私よりも少し年上の岩田はかなり話が上手く、私は彼と話すことが次第に楽しくなっていったと思う。

家族とは毎日顔を合わせて、今日あったことを話すのが日課になっていたが、公園を散歩しただけというのは段々と話すのが億劫になってしまっていた。

それが岩田と知り合ってからは話すことが楽しかったのか、嫁からは『お父さん最近楽しそうね』と言われてしまった。

息子とは同じ家に住んでるが、仕事だったり趣味だとかでほぼ顔を合わせることは少なくなったと思う。

それが続いた日、いつものように岩田と話していたら、突然のにわか雨が降り注いで、傘を常備していなかったせいで2人はびっしょりと濡れてしまった。

岩田が『私の家は直ぐそこなので、良かったらお風呂と着がえを貸しますよ』というお誘いがあり、私は岩田が友達という感覚であったため、何の躊躇いもなく彼の家に向かうのでした。
26/04/23 16:31更新 / 玉梟
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