決裂の夜
その日の夜も、私は俊によってチンポを口で奉仕され、抗うことなく射精させられていた。
(頭でどれほど拒絶していても、身体が言うことを聞いてくれない……)
脳裏を絶望が支配した、まさにその時だった。私の欲棒を口に含んだまま、俊がすべてを決定づける核心的な一言を、低く呟いたのだ。
「フフフ……ここは、僕だけの物だよ」
その瞬間、全身の血が凍りつくような恐怖が私を襲った。やはりそうだ。この男は私の夫などではない。私を執拗に追い回していた、忌まわしいストーカーなのだ。
限界だった。これ以上、この濁った茶番に付き合うつもりは毛頭ない。私はすべてをぶちまける決意を固めた。
奉仕を無理やり止めさせ、ベッドの上に身を起こした私は、精一杯の冷静を装って声を絞り出した。
「……僕と君は、夫婦じゃないんだろう?」
俊は一瞬目を見開いたが、すぐに「夫婦だよ」と必死の形相で弁明を始めた。しかし、私はもう騙されない。
「証拠なら、ここにある」
私は昼間、机から盗み見た彼の携帯電話を突きつけた。
「ここには、僕を監視しているような内容がはっきりと記されている。君は、僕をここに監禁していたんだ! それに、この新聞の切り抜きは何だ!? 僕が行方不明になった記事が出ている。君は一体何者なんだ……! 僕をどうしたいんだよ!」
静まり返った寝室に、私の怒号が響き渡る。
激昂する私を前に、俊は弁解するのをやめ、深く、酷く大きな溜息を一つ吐いた。
「はぁ……」
そして、すべてを諦めたような顔で、ポツリと呟いた。
「またか……」
またか、とはどういう意味だ? 意味不明な言葉に混乱する私を置き去りに、俊は静かに言葉を続けた。
「そうだよ。僕は君の行動から、一瞬だって目を離せないんだ」
自白した。やっぱり、こいつはストーカーだったんだ。
「お前は一体、僕を監禁して、監視して何がしたいんだ! 僕の本物の奥さんはどこにいる! どこに隠したんだ!」
私は半狂乱になり、ベッドの上で暴れ出した。
しかし、俊は歪んだ視線を私に向けたまま、まだ白々しい嘘を吐く。
「本当の奥さんは、僕だよ」
「ふざけるな! 警察に連絡しろ!」
私が叫ぶと、俊は「こんな状況で呼べるわけがないだろう」と冷ややかに言い放ち、私の手から力任せに携帯電話を奪い取った。
そこからは「やった」「やってない」の泥沼の押し問答だった。感情が堰を切ったように溢れ出し、私は彼に罵詈雑言を浴びせ続けた。
「僕は元々、ノンケだったはずだ! それを君が……君が無理やり、僕を男色家(ゲイ)に仕立て上げたんだ!」
もしかすると、逆上した彼によって、私はここで命を奪われるかもしれない。そんな恐怖が頭を過る。けれど、この恐ろしい男に手籠めにされ、飼い殺されるだけの歪んだ生活に戻ることだけは、死んでも嫌だった。
これほどの状況下にあっても、目の前に彼のチンポを差し出されたら奉仕してしまいそうな、不甲斐ない自分がどこかにいる。それが何より恐ろしかった。
「僕はただ……事実を知りたいだけなんだ!」
涙ながらに、私は彼を拒絶した。
俊は私に「落ち着いて」と何度も促してきた。だが、この狂気の世界で落ち着いていられるわけがない。私は理性を失い、部屋の中に散乱していた小物を、手当たり次第に彼へと投げつけた。
「あっちへ行け! 近寄るな!」
枕元に置いてあった重みのある置時計を掴み、狂ったように投げつける。鈍い音がして、それは俊の頭部へ直撃した。
「……っ!」
俊はその場にうずくまり、頭からは鮮血が止めどなく滴り落ちていた。
床に平伏する彼の姿を見て、私は叫んだ。
「お前が悪いんだからな! 正当防衛だ!」
今の内なら、逃げられる。私は俊を置き去りにし、一目散に家を飛び出した。
夜の闇の中、私は靴を履く暇さえなく、裸足のままで駆け出していた。
必死の思いで近隣の民家へと辿り着き、激しくドアをノックする。
「助けてくれ! 殺される! 助けて!」
泥棒か狂人のような私の悲鳴に、怪訝そうな顔で住民が出てきた。衣服は乱れ、髪は振り乱し、ボロボロになった私の姿を見た住民は、事態の異常性を察して表情を強張らせた。
「大、大丈夫ですか……!? 今、すぐ警察を呼びますから!」
その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜けた。助かったのだ。あの監禁の檻から、私はようやく生還できたのだ。
ふと足元を見ると、暗闇の中を裸足で走り続けたせいで、足の裏からは血が滲み出していた。警察よりも先に病院へ行った方がいいと判断され、私は間もなく到着した救急車に乗せられることになった。
病院に到着し、清潔なベッドに横たわる。看護師が優しく傷口を処置しながら、「大変でしたね」と声をかけてくれた。その温もりに触れた途端、張り詰めていた糸が切れ、私の目から自然と涙が零れ落ちた。
しばらくして、診察室へと通された。
そこは白いカーテンで四方を仕切られた空間だった。現れた医師もまた、同情の籠もった声で「大変でしたね……」と静かに語りかけてきた。
しかし。
直感した。その医師の言葉は、ベッドに座る私に向けられたものではなかった。
奇妙な違和感に胸を騒がせ、私は震える手で、診察室を区切る白いカーテンの隙間をそっと覗き込んだ。
細い隙間の向こう。そこに座っていたのは――。
頭に痛々しい包帯を巻き、医師の前で力なくうなだれている、私のストーカーであるはずの、あの「俊」の姿だった。
(頭でどれほど拒絶していても、身体が言うことを聞いてくれない……)
脳裏を絶望が支配した、まさにその時だった。私の欲棒を口に含んだまま、俊がすべてを決定づける核心的な一言を、低く呟いたのだ。
「フフフ……ここは、僕だけの物だよ」
その瞬間、全身の血が凍りつくような恐怖が私を襲った。やはりそうだ。この男は私の夫などではない。私を執拗に追い回していた、忌まわしいストーカーなのだ。
限界だった。これ以上、この濁った茶番に付き合うつもりは毛頭ない。私はすべてをぶちまける決意を固めた。
奉仕を無理やり止めさせ、ベッドの上に身を起こした私は、精一杯の冷静を装って声を絞り出した。
「……僕と君は、夫婦じゃないんだろう?」
俊は一瞬目を見開いたが、すぐに「夫婦だよ」と必死の形相で弁明を始めた。しかし、私はもう騙されない。
「証拠なら、ここにある」
私は昼間、机から盗み見た彼の携帯電話を突きつけた。
「ここには、僕を監視しているような内容がはっきりと記されている。君は、僕をここに監禁していたんだ! それに、この新聞の切り抜きは何だ!? 僕が行方不明になった記事が出ている。君は一体何者なんだ……! 僕をどうしたいんだよ!」
静まり返った寝室に、私の怒号が響き渡る。
激昂する私を前に、俊は弁解するのをやめ、深く、酷く大きな溜息を一つ吐いた。
「はぁ……」
そして、すべてを諦めたような顔で、ポツリと呟いた。
「またか……」
またか、とはどういう意味だ? 意味不明な言葉に混乱する私を置き去りに、俊は静かに言葉を続けた。
「そうだよ。僕は君の行動から、一瞬だって目を離せないんだ」
自白した。やっぱり、こいつはストーカーだったんだ。
「お前は一体、僕を監禁して、監視して何がしたいんだ! 僕の本物の奥さんはどこにいる! どこに隠したんだ!」
私は半狂乱になり、ベッドの上で暴れ出した。
しかし、俊は歪んだ視線を私に向けたまま、まだ白々しい嘘を吐く。
「本当の奥さんは、僕だよ」
「ふざけるな! 警察に連絡しろ!」
私が叫ぶと、俊は「こんな状況で呼べるわけがないだろう」と冷ややかに言い放ち、私の手から力任せに携帯電話を奪い取った。
そこからは「やった」「やってない」の泥沼の押し問答だった。感情が堰を切ったように溢れ出し、私は彼に罵詈雑言を浴びせ続けた。
「僕は元々、ノンケだったはずだ! それを君が……君が無理やり、僕を男色家(ゲイ)に仕立て上げたんだ!」
もしかすると、逆上した彼によって、私はここで命を奪われるかもしれない。そんな恐怖が頭を過る。けれど、この恐ろしい男に手籠めにされ、飼い殺されるだけの歪んだ生活に戻ることだけは、死んでも嫌だった。
これほどの状況下にあっても、目の前に彼のチンポを差し出されたら奉仕してしまいそうな、不甲斐ない自分がどこかにいる。それが何より恐ろしかった。
「僕はただ……事実を知りたいだけなんだ!」
涙ながらに、私は彼を拒絶した。
俊は私に「落ち着いて」と何度も促してきた。だが、この狂気の世界で落ち着いていられるわけがない。私は理性を失い、部屋の中に散乱していた小物を、手当たり次第に彼へと投げつけた。
「あっちへ行け! 近寄るな!」
枕元に置いてあった重みのある置時計を掴み、狂ったように投げつける。鈍い音がして、それは俊の頭部へ直撃した。
「……っ!」
俊はその場にうずくまり、頭からは鮮血が止めどなく滴り落ちていた。
床に平伏する彼の姿を見て、私は叫んだ。
「お前が悪いんだからな! 正当防衛だ!」
今の内なら、逃げられる。私は俊を置き去りにし、一目散に家を飛び出した。
夜の闇の中、私は靴を履く暇さえなく、裸足のままで駆け出していた。
必死の思いで近隣の民家へと辿り着き、激しくドアをノックする。
「助けてくれ! 殺される! 助けて!」
泥棒か狂人のような私の悲鳴に、怪訝そうな顔で住民が出てきた。衣服は乱れ、髪は振り乱し、ボロボロになった私の姿を見た住民は、事態の異常性を察して表情を強張らせた。
「大、大丈夫ですか……!? 今、すぐ警察を呼びますから!」
その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜けた。助かったのだ。あの監禁の檻から、私はようやく生還できたのだ。
ふと足元を見ると、暗闇の中を裸足で走り続けたせいで、足の裏からは血が滲み出していた。警察よりも先に病院へ行った方がいいと判断され、私は間もなく到着した救急車に乗せられることになった。
病院に到着し、清潔なベッドに横たわる。看護師が優しく傷口を処置しながら、「大変でしたね」と声をかけてくれた。その温もりに触れた途端、張り詰めていた糸が切れ、私の目から自然と涙が零れ落ちた。
しばらくして、診察室へと通された。
そこは白いカーテンで四方を仕切られた空間だった。現れた医師もまた、同情の籠もった声で「大変でしたね……」と静かに語りかけてきた。
しかし。
直感した。その医師の言葉は、ベッドに座る私に向けられたものではなかった。
奇妙な違和感に胸を騒がせ、私は震える手で、診察室を区切る白いカーテンの隙間をそっと覗き込んだ。
細い隙間の向こう。そこに座っていたのは――。
頭に痛々しい包帯を巻き、医師の前で力なくうなだれている、私のストーカーであるはずの、あの「俊」の姿だった。
26/06/04 17:35更新 / 調教師の60代
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