連載小説
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揺らぐ信頼
夜になると、俊はいつものように私のベッドへと潜り込み、身体を寄せて眠りにつく。

あれだけ毎日のように互いの肌を貪り合ってきたせいだろう。恐怖を抱いているはずなのに、彼の体温を感じ、その特有の雄の匂いを鼻腔に吸い込むだけで、私のチンポはあられもなく熱く、巨大化してしまうのだった。
俊が暗闇のなかで私の股間に手を伸ばし、そこが硬く元気になっているのを確かめる。すると、彼は嬉しそうに吐息を漏らし、あの甘い口づけと熟練した口技で、私を瞬く間に快楽の深淵へと誘うのだった。

頭のなかでは激しい不信感が渦巻いているのに、肉体は完全に彼の支配下にあり、全く言うことを聞いてくれない。

私がどこか怯え、しどろもどろな態度を取っていることに気づいたのか、俊は愛撫の手を止めずに「どうしたの?」と優しく囁いてくる。
もし本当に私たちが夫婦でないのなら、彼の目的は一体何なのだろう。だが、ここで彼を問い詰めれば、正体を現した彼に何をされるか分からなかった。命の危険すら感じる。私は恐怖を押し殺し、押し寄せる快楽に本能のまま身を委ねるしかなかった。
(いつか……きっと、いつかは彼の真実を暴いてみせる)
そう自分に言い聞かせるのが、精一杯だった。

心の中では「私たちは夫婦ではない」という確信が日に日に強まっていく。それなのに、彼から求められると身体が歓喜の声を上げてしまう。
嫌だ、恐ろしい、そう拒絶したいのに、俊から熱いチンポを目の前に差し出されると、胸の奥から「愛おしい」という感情が不意に湧き上がり、跪いて口で奉仕することを止められなかった。

彼の口内から溢れる精液すらも、私は当たり前のように飲み干してしまう。私は俊に対して、対等な恋心など抱いてはいないのではないか。むしろ、彼に逆らえない「主従関係」のような歪んだ関係性を本能で望んでいる、とんでもない変態なのではないか――。そんな自己嫌悪が私を激しく苛んだ。

俊が出かける度に家の中を詮索し、不信感を肥大化させる。しかし、その日の夜にひとたび身体を重ねてしまえば、一瞬にして歪んだ愛情のなかへと引き戻されてしまう。そんな奇妙で恐ろしい日々が繰り返された。
私はこのまま彼のチンポの虜になり、飼い慣らされた獣として一生を終えるのだろうか。
恐怖と快楽の狭間で、私の精神は次第に「諦め」という底なしの境地へと沈んでいった。


その晩も、私は俊から差し出されたチンポをいつものように深く咥え込み、自分のチンポもまた張り裂けんばかりに硬くさせていた。
俊にチンポを舐め上げられ、解されたお尻は、促されるまでもなく自然と彼の太い欲棒を受け入れていく。その都度、私の口からは淫らな喘ぎ声が漏れ出た。

心では叫んでいるのだ。『夫婦でもない見知らぬ相手にこんなことをされて、狂うほど感じてしまっている変態め』と。それでも、お尻の奥を容赦なく貫かれ、激しく腰を動かされる度に、私は情けないよがり声を上げてしまう。激しく突かれながら、強引に唇を塞がれると、脳が快楽の海に溺れて何も考えられなくなる。
私は記憶を失う前、きっと酷く淫乱な男だったのだろう。こういう破廉恥な行為でしか、歓びを感じられない身体だったに違いない。そう思い込もうとしていた。

しかし、快楽漬けにされ、骨抜きにされかかっている日々のなかでも、私の魂はかすかに、外の世界の情報を得ることに飢えていた。

ある日の午後、千載一遇のチャンスが訪れた。俊が急ぎ足で何処かへ出かけた際、いつもなら肌身離さず持っているはずの携帯電話が、リビングの机の上にぽつんと置き忘れられていたのだ。
心臓が破裂しそうなほど激しく脈打つ。私は周囲を警戒しながら、その黒い端末に手を伸ばした。

画面を開くと、何かの連絡ツールで、俊が誰かと会話を交わした履歴が残っていた。
メッセージをスクロールする。私の手は恐怖で小刻みに震えていた。

『彼の行動からは、一瞬も目が離せないんだ』
『私には、彼しかいないから』

俊が送ったとおぼしき言葉の数々。それに対する相手からの返信に、私は目を疑った。

『お前のそれは、もう完全にストーカーの領域だよ』

――ストーカー。

脳天を殴られたような衝撃だった。その不穏な単語を目にした瞬間、これまでの俊の異常なまでの束縛や、私を追う視線の意味が、すべて一本の線で繋がった。

最初に目覚めた時、彼は私が「事故に遭って記憶を失った」と説明した。だが、私が目覚めたのは病院の清潔なベッドではなく、この薄暗い密室の一室だった。そして、初めて身体を重ねたあの日、彼が流した涙と「嬉しい」という言葉。あれは回復を喜んだのではない。監禁し、記憶を奪った私との関係を、ついに強引に既成事実化できたことへの、狂気の歓喜だったのだ。

私はあの新聞の切り抜きを思い出し、確信した。
(私には……きっと、本当の世界で、私の帰りを待っている人がいるはずだ)

このままあの男に心も身体も染め上げられ、ここで狂って人生を終えることだけは、絶対に避けなければならない。
そもそも、私は元から男性が趣味などではなかったのだ。本当は、女性を愛する普通の「ノンケ」だったに違いない。それを、あのストーカーの男が、暴力的な快楽と薬(介護)によって、すべてを無理やり作り変えてしまったんだ――。

その思いに至った瞬間、俊に対する不信感は、絶対に許してはならない明確な「敵意」へと切り替わった。
26/06/04 17:34更新 / 調教師の60代
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