連載小説
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歪んだ絆の調律
わずか徒歩10分の距離。岩井さんの家と私の家を隔てるそのわずかな距離すら、激しく求め合う私たちにとっては、あまりにも遠く、もどかしい障壁だった。
「一緒に暮らそう」
彼のその一言に促されるようにして、私たちは自然と同棲を始めた。

それからの日々は、まさに甘美な夢そのものだった。
毎朝、彼の逞しい腕の中で目を覚まし、日中は幾度となく互いの身体を貪り合う。陽が落ちれば手を繋いで夜風に吹かれ、夜は湯船で肌を寄せ合う。同じベッドに潜り込むたび、私の心の奥底からは「私は最高に幸せだ」という歓喜の咆哮が沸き上がっていた。

この年齢にして開かれた、男色の世界。その最初の扉が「強制的な強奪」であったことを、岩井さんは誰よりも気に病み、そして愛おしんでくれた。彼は私の「あらゆる初めて」を、まるで他者の記憶をすべて塗りつぶすかのように、一つずつ丁寧に、かつ貪欲に奪っていった。

最初は、身体を重ねて彼を受け入れ、口内や体内に彼の熱い精液を注がれるだけで満たされていた。しかし、私のすべてを支配したいという彼の愛欲は、次第に嗜虐的な(Sタチとしての)本能へとエスカレートしていく。
ある日、彼は私を縄で縛り上げることを提案した。
始まりが田口による緊縛だった私にとって、それは恐怖の再来になり得た。しかし岩井さんの意図は違った。「その忌まわしい記憶を、俺の愛で上書きしたい。お前の身体を、俺以外の誰も受け付けないように束縛したい」という、烈しい独占欲の顕れだったのだ。

躊躇いは一瞬で消えた。私の心はすでに彼で満たされている。
より深い官能の深淵へ。縄で縛られた私に、彼は熱い蝋を垂らし、鞭を振るった。それは苦痛ではなく、至高の愛の証としての快楽だった。やがて行為はエスカレートし、彼は自らの黄金の液体(小便)を私の口内へと注ぎ込んだ。私はその体液の味を、彼そのものを噛みしめるように愛おしく飲み干した。私のペニスは歓喜に呼応して硬く昂ぶっていた。彼もまた私のそれを強く切望し、私は喜んで彼の口内へと放出する。互いに「美味しい」と微笑みながら飲み交わすその儀式は、今や私たちの日常の、最も深い愛の証明となっていた。

そんな桃色の生活が半年を過ぎた頃、ついに「あの男」への復讐——いや、転機のチャンスが訪れた。
本音を言えば、私を強引にこの世界へ引きずり込んだ田口に対し、もはや一ミリの恨みもなかった。彼があの夜の過ちを犯さなければ、私は岩井さんという生涯の伴侶に出会えなかったのだから。
「復讐という名目ではなく、彼にお礼をしてあげよう」
私の提案に、岩井さんは悪戯っぽく、かつ冷徹に微笑んだ。

狭い下町のネットワークは、私たちが男同士で暮らしている事実をすぐに田口の耳へと届けた。
ある日、田口は私たちの愛の巣へとズカズカと踏み込んできた。そして私を見るなり、下品に嘲笑した。
「やっぱり男好きだったんじゃねぇか。それで、今日は山口を二人でヤるのか?」

私を卑下するその言葉を聞いた瞬間、岩井さんの拳が怒りで小刻みに震えるのがわかった。しかし、私たちはあらかじめ練っていた計画を実行に移した。
「まずはお酒でも飲まない?」
努めて冷静に、彼にグラスを差し出す。田口は恵まれた巨体を誇り、力任せにねじ伏せるタイプだったが、決定的な弱点があった。アルコールに対して極端に弱いのだ。
どこか私を見下している彼は、私からの「あれ?全然お酒飲めないんですか?」という挑発にプライドを刺激されたのだろう。純度の高い酒を、煽るように一気に飲み干した。私は微笑みを絶やさず、彼に酒を注ぎ続けた。
強烈なアルコールが回り、呂律が回らなくなった田口は、やがて床に大いびきをかいて崩れ落ちた。

「じゃあ、お礼の準備をしようか」
岩井さんと視線を交わす。私たちの神聖な家をあの男に汚されたくはなかった。私たちは彼の巨体を抱え、あらかじめ手配していたレンタルプレイルームへと場所を移すことにした。
改めて見ると、田口は身体が大きく、かなり毛深い、いかにも男臭い男だった。ゲイの人間が彼に惹かれるのも無理はないと思わせる野性味があった。
私たちは、大いびきをかいて眠りこけるその男の衣服をすべて剥ぎ取り、容赦なく縄で縛り上げた。
26/06/02 11:20更新 / 調教師の60代
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