連載小説
[TOP][目次]
暴かれた因縁の糸
あの昼下がりの私には知る由もなかったが、男性同士がお尻で繋がるためには、あらかじめ「浣腸」をして胎内を綺麗に洗浄しておく必要があるらしかった。
私は岩井さんに優しく手を引かれ、彼の家の浴室へと向かった。
彼は手際よくシャワーのヘッド部分を取り外すと、ホースの先から流れる温かい水を、私のお尻の窄みへとそっと注ぎ込んできた。
「お腹が張って少し苦しいかもしれないけれど、我慢するんだよ」
岩井さんの穏やかな声に促され、私は身を強張らせながらも必死に耐えた。私が健気にも彼の言う通りに頑張っている姿が、岩井さんにはたまらなく愛おしく映ったのだろう。
「山口さん、君のことが大好きだよ……」
彼は溢れるような情愛を込めて、水に濡れた私の唇に幾度も優しいキスを重ねてくれた。

何度も何度も丁寧な洗浄を繰り返し、お尻の中が完全に綺麗になったのを確認すると、私たちは水気を拭いてベッドへと移動した。
昼間に公衆トイレの個室であれほど濃密な経験をしたばかりだというのに、私の肉体は、不思議と「もっと彼にやられてみたい」という強い渇きを覚えていた。長年凍りついていた本能が、完全に狂い咲いていた。
ベッドの上で岩井さんから注がれる優しい愛撫の数々に、私のペニスはドクドクと歓喜の脈を打つ。やがて私たちは自然とお互いの身体を舐め合う形になり、岩井さんは私のお尻に這わせた舌を、その奥の穴の中まで滑り込ませて弄んできた。

田口に無理遣りやられた時は、引き裂かれるような痛みと不快感しかなかった。それなのに、大好きな岩井さんが触れてくれると、そこは快楽を生み出す極上の性感帯へと変貌する。
(私も、彼をこれ以上ないくらい気持ちよくしてあげたい……!)
その一心で、私は彼と体勢を入れ替え、今度は私が岩井さんのお尻に舌を這わせた。
「あ、あぁっ……! 山口さん、そんなに激しくされたら、僕、もう出ちゃうよ……っ」
岩井さんは身体を弓なりにのけぞらせ、全身で快感を表してくれた。彼がそれほどまでに悦んでくれることが、私の興奮をさらに加速させる。彼も負けじと私のペニスや敏感な部分を舐め上げて尊び、私の口からは自然と「あんっ……!」という、自分でも驚くほど甲高い艶っぽい声が漏れ出していた。

やがて岩井さんはベッドの脇に置かれていたローションを手に取り、私の不安を遮るように優しい声で囁いた。
「痛かったら、いつでもすぐに言うんだよ」
(また、あの時のように痛かったらどうしよう……)
乱暴に奪われた記憶が頭をよぎり、一瞬だけ恐怖が首をもたげる。だが、岩井さんは私のペニスを優しく口に咥えて愛撫しながら、同時にもう片方の手でお尻の窄みへと、指を一本、二本とゆっくり、慎重に馴染ませていった。
不思議なことだった。田口の時はただただ痛みが走り、ペニスは無反応だった。しかし、岩井さんの太い指が奥へと侵入してきても、私の昂りは萎えるどころか、むしろ舐められているだけの時よりも遥かに強い、熱い快楽の波に襲われていたのだ。

下腹部から突き上げるような熱い衝動に耐えきれなくなりそうで、私は思わず岩井さんの頭を私のペニスから引き剥がした。
岩井さんはハッと顔を上げ、心配そうに声を曇らせた。
「ごめん……! 痛かったかい?」
「ち、違うんです……。気持ち良すぎて、このままいってしまいそうなんです……っ」
私の切迫した告白を聞いた岩井さんの瞳に、強い雄の光が灯った。
「もう、僕も我慢できないんだ……入れるね!」

岩井さんの頑強なペニスが、ローションに濡れた私のお尻の中へとゆっくりと割入ってきた。
そのすべてが体内に収まった瞬間、私は昼間の口内での交わりを遥かに凌駕する、脳が沸騰するほどの快感に突き落とされた。お尻の奥を男の肉塊で埋め尽くされる充足感。岩井さんが腰を大きく前後に動かし、私を深く突くたびに、私は恥じらいも忘れて叫んでいた。
「気持ちいい……! 岩井さん、もっと、もっと突いて……っ!」
男に貫かれている最中だというのに、私のペニスは一向に萎える気配がなく、むしろ歓喜に震えてパンパンに膨張し、熱い我慢汁を溢れさせていた。
私にとってはまだ二度目のお尻だったため、窄みはかなりきつく締まっていたのだろう。数分もしないうちに、岩井さんの呼吸が限界を迎えた。
「山口さん、ごめん……っ! もう、我慢ができない……!」
そう叫ぶと同時に、彼のはち切れんばかりの象徴から、私の中へと熱い精液がドクドクと勢いよく注入された。

彼のお尻の奥で、男の肉塊が脈打つように跳ねる感触がリアルに伝わってくる。その最高の刺激と同時に、私のペニスからも、堪えていた精液が爆発するように大量に噴射された。
昼間にあれほど濃厚なものを放出したというのに、それを全く感じさせないほどの圧倒的な量と濃さだった。岩井さんは驚き、そして満足そうに目を細めた。
私たちは身体を繋げたまま、お互いの熱い吐息を交わすように深く深くキスをした。彼という存在を全身で受け入れながら、私は言葉では表現しきれないほどの、底知れない多幸感の海に深く深く溺れていた。

行為が終わり、岩井さんのペニスが名残惜しそうにお尻から引き抜かれた。私は彼への愛おしさが抑えきれなくなり、今度は自ら彼の股間に顔をうずめた。そして、彼の尿道に残った僅かな精液まで愛おしむように綺麗に吸い尽くし、口で丁寧に処理をしてあげた。
岩井さんもまた、ベッドに飛び散った私の精液を愛おしそうに舐め取ると、「山口さんの、とても美味しいよ……」と微笑んだ。その言葉に、私たちは身体だけでなく、魂の相性までもが抜群であるということを確信していた。

すべてを終え、私たちは心地よい疲労感の中で、添い寝をするように岩井さんの逞しい腕枕に抱かれて休んでいた。
静寂の中、岩井さんがふと天井を見つめながら、衝撃的な事実を口にしたのはその時だった。
「……そういえば、山口さん。あの田口って男、僕が前に付き合っていた奴なんだよ」
「え……っ!?」
私は驚きのあまり、岩井さんの腕の中で跳ね起きた。

「あいつは本当に碌な奴じゃなくてね。遊び癖が酷くて浮気ばかりするから、僕から愛想を尽かして別れたんだ」
田口が私を襲った理由が、岩井さんと別れた腹いせなのか、それともただの偶然の行き違いだったのかは分からない。しかし、あの暴力的な男が、今こうして私を抱きしめてくれている岩井さんの元恋人だったという事実は、あまりにも奇妙で恐ろしい因縁だった。
岩井さんは私の肩を優しく抱き寄せると、強い決意を秘めた声で続けた。
「あいつは僕の愛する山口さんに、絶対にやってはいけない酷い暴力を振るった。許せない。だから、いつか必ずあいつを罠にハメて、相応の報いを受けさせて懲らしめてやるつもりだよ。……その時が来るまでは、二人でずっと一緒にいようね」

岩井さんの力強い言葉に、私は深く頷き、再びその胸に顔を埋めた。
その夜を境に、私たちは毎日のように互いの身体を求め合い、激しく肌を重ねるようになっていった。孤独に死を待つだけだった私の人生は、一つの歪んだ事件をきっかけに、愛に満ち溢れた桃色の世界へと、完全に塗り替えられたのだ。
26/06/02 11:19更新 / 調教師の60代
戻る 次へ

TOP | 感想

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c