連載小説
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飽くなき饗宴
50代を迎えても、私の本能は衰えるどころか、より純度の高い刺激を求めていた。誰かと寄り添う甘い関係など端から興味はない。その場限りの刹那の交わり、あるいは利害の一致した肉体関係こそが私のすべてだった。

サウナでの行きずりの情事、あるいは定期的なホテルでの密会。私の好みは一貫していた。自分よりもどこか老成した、年上の男。当時、定期的に肌を重ねていた70代の男は、極上の「ウケ」だった。しかし、回数を重ねるごとに、彼の内に潜む歪んだ欲望の蓋が外れていったのだ。

「お前の種を、奥深くまで注ぎ込んでくれ……」
初めは、ただの種付けで満足していた男だった。しかし、欲望はエスカレートしていく。事後に私のペニスを執拗に舐め回し、やがて「種付けなしでも、お前の精を全て飲み干したい」と懇願するようになった。

さらに男の要求は、狂気を帯びていく。
「お願いだ。シャワーを浴びずに、そのままの体で来てくれ」

夏の盛り、私は前日の夜から一切体を洗わずに約束の部屋へ向かった。衣服を脱ぎ捨てると、むっとするような男の汗と、強烈な体臭が部屋に満ちる。私のペニスからは、熟成された野卑な匂いが立ち上っていた。
男の目が、獣のように爛々と輝く。

「あぁ……たまらない……っ!」
男は這いつくばり、私の足の先から全身を、そしてその匂い立つ中心を、狂ったように舌で舐め上げた。その時、男のペニスは破裂しそうなほどに怒張していた。これほどまでに支配され、汚されることに快感を覚える人間がいるのかと、私は背筋が震えるような昂りを感じていた。

欲望の泥沼はどこまでも深い。男の要望のままに、私は彼を縄で縛り上げ、その秘部を舐め、最終的には、彼の開いた口内へと私の小便をダイレクトに注ぎ込むまでになった。
男を完全に支配し、陵辱する快楽――。このただれた儀式を経て、私は単なる「タチ」から、冷徹に相手を屈服させる「Sタチ」へと完全に覚醒したのだ。

時代は令和へと移り、世界はコロナ禍という未曾有の混沌に包まれた。
密室の極みであるサウナへ足を運ぶのは、さすがに躊躇われる。そこで私が目をつけたのが、ゲイ専用のネット掲示板だった。自分の年齢、属性、そして「Sタチとして求める過激なプレイ内容」をあらかじめ明記し、共鳴する相手からの連絡を待つ。直感だけで繋がれたサウナとは違い、文面のやり取りという微睡は面倒だったが、特殊な性癖を満たしてくれる極上の獲物を吟味するには、都合が良かった。

もちろん、ネットの海は一筋縄ではいかない。私の要望を100%満たす男など早々おらず、7割ほどの妥協で関係を続ける日々だったが、それ以上に鬱陶しいのは、ルールを守れない有象無象の存在だった。

私は「年上、または同年代」を絶対条件として掲げている。にもかかわらず、「ダメ元で」と猪突猛進に突っ込んでくる若者たち。そんな無駄なやり取りに割く時間はない。私はそれらを一切「無視」という無言の壁で切り捨てた。
さらに、やりたい要望だけを書き連ね、肝心の自身のプロフィールを隠して接触してくる不調法な男たちにも、底知れない辟易しさを感じていた。

だが、最も不快で、そして滑稽だったのは、私の「Sタチ」としての自己紹介に対し、わざわざ批判のメールを送りつけてくる輩の存在だった。

『掲示板を汚すな』

使い捨ての捨てアドから送られてくる、そんな子供じみた言葉のナイフ。
ゲイの世界など、千差万別、十人十色の欲望が渦巻く魔窟のはずだ。自分の好みに合わないからといって、他人の性癖を正義の面をして批判するなど、お門違いも甚だしい。
(きっと、誰からも相手にされず、孤独にのたうち回っている哀れな人間が、私のような堂々と生きる人間に嫉妬して憤りをぶつけているのだろう――)

実際に、私の書き込みを見て「ぜひそのプレイを洗礼してほしい」と、すでに数人の極上なウケから情熱的なメールが届いており、現実に繋がっている。多数派の意見から見れば、文句を言ってくる方が明らかに狂った少数派なのだ。
お断りした相手の逆恨みか、あるいは底辺の暇人の犯行か。

そんな歪んだ悪意のメールが数件届き、私はいつものように冷笑しながらゴミ箱へ捨てていた。
しかし、その日もまた、いつもと同じ文面の、不穏なメールが私の画面に滑り込んできた。

だが――そのメールは、これまでの単なる嫌がらせとは、どこか「違って」いたのだ。
26/05/27 17:40更新 / 調教師の60代
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