連載小説
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支配の味
私は彼の眼前に自身の質量を突きつけ、静かに、しかし抗いようのない口調で命じた。
「ちゃんと舐めなさい」

今日という日のために、あえて入念な仕込みをしておいた。まるでこの調教の瞬間を見越していたかのように、そこからは男の業を凝縮したような、濃厚な匂いが立ち上っている。

彼は怯え、戸惑うような視線を向けながらも、縄で自由を奪われた身体をかすかに震わせ、私のまだ萎んだままの質量に恐る恐る舌を這わせはじめた。
ふと彼の股間に目をやると、それは私のそれよりも遥かに小さく縮こまっている。おそらく彼は、同性の、それも他人のそれを間近で見たことすら初めてなのだろう。

不器用な舌先が触れるたび、私の内側から熱いものがせり上がってくる。彼の口内で、私のペニスがじわじわと脈打ち、硬さと太さを増していくのが手に取るように分かった。

彼を突き動かしているのは、生まれて初めて嗅ぐ濃厚な匂いへの困惑なのか、それとも、この極限状態によって彼の奥底に眠っていた「Mの気質」が呼び覚まされたからなのか。その理由はまだ、闇の中だった。

実は、この後に彼の後孔を貫く青写真を描いていた。彼はそれを本能的に察知しているのだろう。お尻だけは死守したいという必死の防衛本能からか、驚くほど懸命に奉仕を続けている。

しかし、つい先ほどまで純粋な「ノンケ」として生きてきた男だ。ゲイの世界で培われるような、愛撫としての咥え方や、快感を与えるためのテクニックなど知る由もない。
私が「舐めろ」と命じたから、文字通り、子供が飴玉を転がすように忠実に舌を動かしているだけだった。
だが、こちらが求めているのはそんな「児戯」ではない。口に含み、喉の奥で締め付け、貪るような愛撫。その未熟な奉仕に、私の欲望は到底満たされずにいた。

身動きの取れない彼を、私はただ見下ろす。縛られた身体をいいことに、私は腰を進め、その不器用な唇をこじ開けるようにして、質量を喉の奥深くへと押し込んでいった。

「うぐっ……、ん、く……っ」

激しくむせ返る彼。それでも彼は必死に耐えていた。ここで拒絶してお尻を開かされるくらいなら、口の中で全てを鎮め、この悪夢を終わらせた方がマシだと、そう思い込んでいるようだった。

その健気なまでの誤算が、私の嗜虐心をさらに煽る。
タイプである彼の「初めて」を自分が奪っているという優越感。そして、世間では「ノンケ」という一種のブランドを背負って生きている誇り高き男を、いま自らの足元で完全に屈服させているという事実。その背徳的な興奮に、私の全身は歓喜で震えていた。

呼吸を荒くしながらも、彼は次第にその異物感に順応しつつあった。いや、やはり目覚めてしまったのだろう。
拒絶の拒絶の果てに、彼の口は、そして喉はゆっくりと開き始めていた。まるで、私から放たれる生命の種を、すべて受け入れるための器へと変貌していくかのように――。

喉を開きかけた彼を眼下に収め、私はこの後に控える官能のシナリオを思い描き、狂おしいほどの興奮に突き動かされていた。
最初は必死に唇と舌を動かすだけだった彼だが、こちらの昂ぶりもすでに限界だった。腰を打ち付ける衝動を止められず、私は彼の口内の奥深くへと、熱い精滴を容赦なく叩き込んだ。

「んぐ、ぅ……っ!?」

男の味をその身に刻み込ませるため、十分に飲み干す時間を与えてから、ゆっくりと引き抜く。
だが次の瞬間、彼は「ペッ!」と激しい音を立てて、吐き出せる限りの精液を床にぶちまけた。それは、自由を奪われた彼が必死に手繰り寄せた、最後の抵抗の証だった。

私は極めてにこやかな笑みを浮かべ、彼を見つめた。しかし、その目の奥だけは、凍りつくほどに冷酷だったはずだ。
「ちゃんと飲んでくれないと、駄目じゃないか」

すると彼は、自分がまだノンケ側の人間であることを誇示するかのように、一転して乱暴な口調を取り戻した。
「出来るわけがないだろ! 馬鹿か!」
さっきまでの従順な姿はどこへやら、剥き出しの敵意。思い通りに翻弄される姿は愛らしかったが、期待を裏切られた落胆は隠せず、私はわざとらしく、盛大な溜息をひとつ溢してみせた。

「せっかく口で受け入れて、大人しく飲んでくれたなら、お尻の方は勘弁してあげようと思ったのにね……」
その言葉を聞いた瞬間、彼の顔から血の気が引いた。今更ながら事の重大さに気づいたのだろう、彼はすぐさま言葉遣いを正し、必死の形相で弁明を始めた。だが、もう遅い。

私は持参したバッグから、おもむろに道具を取り出した。
すでに事前の浣腸によって、受け入れる準備は整っているはずだ。彼のお尻に冷たいローションをたっぷりと垂らし、躊躇なく指を滑り込ませていく。
私がいつも相手にしている百戦錬磨の「ウケ」たちなら、4〜5本の指など容易く飲み込んでみせる。いくら初めてとはいえ、準備万端の秘丘だ、指の数本くらいは余裕で受け止められるはずだと高を括っていた。

「あ、が……っ! 嘘だろ、やめてくれ……っ!」

悲鳴ともつかぬ、狂おしいうめき声が室内に響き渡る。
しかし、それは決して肉体的な「痛み」ではない。大の大人が直腸検査で指を入れられたからといって、激痛にのたうち回るわけがないのだ。彼を襲っているのは、未知の異物が侵入してくる恐怖と、圧倒的な「違和感」だった。
それでも、彼はその精神的な負荷に耐えきれなかった。あれほど頑なに拒んでいたはずの後孔への侵入。その恐怖に屈した彼は、涙目で激しく頭を振りながら、ついに決定的な言葉を口にした。

「何でもします! 何でも飲みますから……だから、そこは抜いてください……っ!」

私は満足して指を引き抜いた。そして再び彼の目の前に立ち、自らの質量をその唇へと運んでいく。
彼の瞳に、かすかな安堵と、どこか余裕を含んだ色が浮かんだのを私は見逃さなかった。彼は私の年齢を知っている。世間一般には「老人」と呼ばれるこの年齢だ、短時間で二度も白濁を絞り出せるはずがない――そう踏んだのだろう。
「早く出して終わらせろ」と言わんばかりに、彼は自ら動きを早め、挑発するように私のペニスを煽ってきた。

しかし、彼は決定的な勘違いをしていた。
SMという深淵なる世界において、男が男に飲ませるものは、決して精液だけではないということを、この未熟なノンケは知る由もなかったのだ。

先ほどの射精、そして彼による激しい追撃の刺激によって、私の内側では、ブルブルと震えるような別の欲望が鎌首をもたげていた。それは、熱い尿をすべて吐き出したいという、圧倒的な排泄欲だった。

これまで手懐けてきた本物のMたちは、私が事を終えた後に顔を近づけると、それだけで次の展開を察し、恍惚とした表情で口を大きく広げたものだ。そして、放たれる黄金の液体を、至上の喜びとして 喉に流し込んでいた。

目の前の彼が、それを許容するかどうかは賭けだった。しかし、激しく動く彼の舌は、まるで私のすべてを欲しがっているようにも見えた。
私は欲望のままに、彼の口内へと熱い小便を勢いよく放出させた。

「ごふっ……!? げほっ、う、ぅあ!」

当然、想定すらしていなかった事態に、彼は激しくむせ返る。
私の放った熱い尿は、一度は彼の口内へと流れ込んだものの、パニックに陥った彼の唇から堰を切ったように溢れ出し、顎を伝って、無残に床へと垂れ流されていった。支配と従属の境界線で、彼はただ、男の洗礼に溺れていた。
26/05/29 14:10更新 / 調教師の60代
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